法人の権利能力・行為能力
ほうじんのけんりのうりょく・こういのうりょく
民法第43条では「法人は法令の規定に従い、定款又は寄附行為に定められた目的の範囲内において、権利を有し義務を負う」と規定している。
この規定は、法人の権利能力の範囲を制限し、それと同時に法人の行為能力の範囲をも定めた規定であると解されている(判例、通説)。
すなわち、定款または寄附行為に記載された目的を超えた行為を法人の代表機関(=理事など)が行なった場合には、その理事などの行為は、法人の権利能力(および行為能力)の範囲を超えるので、その理事などの行為は法人に帰属しないという趣旨である。
しかしながら実際には法人の理事が一見「目的の範囲」を超える行為を行なうことは多く見られるので、これをどのように解釈すべきかが問題となる。
1:目的の範囲を一見超えていると見られる理事の行為
定款には記載のない種類の行為を理事が行なった場合について、判例では、「目的の範囲」を極力拡大して解釈することにより、理事の行為を法人の行為として法人に帰属させている(例えば会社の政治献金を「目的の範囲内」と解釈する。)
2:理事の不法行為
理事が「目的の範囲内」の行為によって、不法に他者に損害を与えた場合には、法人がその不法行為について損害賠償責任を負う(民法第44条第1項)。この場合にも、理事の職務行為を広く解釈することにより、法人の損害賠償責任の範囲を広く解釈する(詳しくは法人の不法行為責任へ)。
定款
社団法人に関する根本的な規則を定めた書面のこと(民法第37条)。
定款は社団法人の設立者が作成する。定款の必要的記載事項は、目的、名称、事務所、資産に関する規定、理事の任免に関する規定、社員資格の得喪に関する規定である。
寄附行為
財団法人に関する根本的な規則を定めた書面のこと(民法第39条)。
寄附行為は財団法人の設立者が作成する。寄附行為の必要的記載事項は、目的、名称、事務所、資産に関する規定、理事の任免に関する規定である。
権利能力
法律上の権利・義務の主体となることができるという資格のこと。
人間(自然人)は生まれながらにして、このような権利能力を有するとされている(民法第1条の3)。
また社団法人などの法人も権利能力を有することとされている(民法第43条)。
なお、出生前の胎児については、原則として権利能力を有しないこととされているが、相続・遺贈・損害賠償については出生前の胎児であっても権利能力があるものとみなされる。ただし死産の場合には初めから権利能力がなかったこととなる(民法第721条、第886条、第965条)。
行為能力
自分が行なった法律行為の効果を確定的に自分に帰属させる能力のこと。
法律行為を有効に行なうには意思能力を持つことが必要とされているが、実際の契約等において意思能力を持たない者(=意思無能力者)が、契約当時に意思能力を欠いていたことを事後的に証明することは非常に困難である。
そこで民法では、正常かつ完成された精神能力を持たない者を画一的に「行為能力が制限された者」(=制限能力者)として取り扱い、こうした者を保護している。
このような制限能力者には、法定代理人または保佐人・補助人が選任されている。制限能力者が、これらの法定代理人等の同意を得ないで単独で行なった法律行為は原則として事後的に取消しが可能である。
このように法定代理人等に同意権を与えることにより、制限能力者が不適切な法律行為により不利益を被ることがないよう監視しているのである。
制限能力者とされているのは、未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人である。
理事
区分所有建物の区分所有者が組織する管理組合の理事会において、理事会を構成する役職者である。
理事は、管理組合の集会において区分所有者の中から選出される。理事は理事会の一員として、理事会で議決権を行使し、管理規約で定められた理事会の職務を執行する。
法人の不法行為責任
民法第44条第1項では「法人の代表機関(=理事など)が、定款または寄附行為に記載された目的の範囲内で、職務を行なって他人に損害を加えた場合には、法人がその損害賠償の責任を負う」旨を定めている。
この規定について、法人実在説の立場からは、法人が社会的実在である以上、法人自身が不法行為を行なうことは当然にあり得るので、目的の範囲内で法人は損害賠償責任を負うのが当然であると解釈されている(ただし法人擬制説・法人否認説では理事の不法行為について、法人に責任を負わせた特例的な規定であると解釈されている)。
この法人の不法責任について、「理事などが職務を行なうについて他人に損害を加えた」という部分の解釈が重要である。
もし理事の職務執行の範囲を厳格に解釈するならば、理事の職務執行に「不法行為」が含まれることはあり得ないので、この民法第44条第1項の規定が無意味なものとなってしまう。そこで判例では、理事の職務執行の範囲を広く解釈している。
具体的には判例では「外形上、理事の職務行為と認められるもの、及び社会通念上その職務行為に関連するもの」を理事の職務執行としている(これを外形理論という)。
このように理事の職務執行を広く解釈することにより、法人と取引をする相手方を保護しているのである。
なお、民法第44条第1項により法人が不法行為責任を負う場合でも、理事個人も個人として不法行為責任を負うものとされている(判例)。