不動産用語集 - 不動産業務に役立つ基礎知識
不動産実務用語

申込証拠金(申込金)

読み: もうしこみしょうこきん

契約締結以前に、予約・優先等の目的で、宅地建物取引業者が顧客から預かる金銭。

宅地建物取引業法は、手付金については、同法第39条(手付の額の制限等)、第41条(手付金等の保全)等の条項があり、それ以外の支払金または預かり金については、その保全措置について同法第35条の重要事項説明の対象とするなど、契約締結から引き渡しまでに授受される報酬以外の金銭については規定しているが、契約締結前に授受される申込証拠金(申込金)等については、特段の規定がない。

正式な契約に至れば、清算行為の中でそのまま手付金の一部となり、やがては代金の一部となることも想定される。予約、優先的な扱いの依頼、契約事務手数料という性格を有する預り金として授受されるといわれているが、預かった売り主および業者側に物件確保その他の義務が生じるかは明確でない。「不動産業界の取引慣行として行われてきており、法的な性格はあいまい」との指摘もある。

買い主側・顧客側が申し込みの撤回、キャンセルをした場合に、売り主側・業者側が返還義務を負うか、返還を拒否できるかが問題であり、「業者側は返還を拒否することもできる」とする説もあるが、宅地建物取引業法第47条の2第3項および同法施行規則第16条の11第2号は、「既に受領した預り金を返還することを拒むこと」を相手方等の利益の保護に欠ける行為として禁止している。これについては、国土交通省が示している「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」において、「契約の申込時に宅地建物取引業者が受領していた申込証拠金その他の預り金について、返還を拒むことの禁止」「いかなる理由があっても一旦返還すべきであるという趣旨」としていることからも、事実上キャンセル時に申込証拠金等の返還を拒否することは許されないという監督側の解釈は確立していると解すべきであろう。東京都住宅政策本部「不動産取引の手引き」においても同様の記述がある。(手付金との関係については、「手付金」および「手付金等保全措置」を参照)

なお、業者が売り主でなく、売買または賃貸の媒介をする場合には、そもそも申込証拠金等を媒介業者が預かる趣旨が明確でなく、受領すること自体に否定的な見解が多い。