不動産用語集|R.E.Words by(株)不動産流通研究所

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最終更新日:2017/12/8

職務行為

しょくむこうい

法人理事が、法人の目的の範囲内で行なう行為のこと。
法人は定款または寄附行為に定められた目的の範囲内で、権利を取得し、義務を負担することとされているので、法人の代表機関である理事はこの目的の範囲内で代表機関としての行為を行なうことができる。このような理事の行為のことを一般に「職務行為」と呼んでいる(法人の権利能力・行為能力を参照のこと)。

理事の職務行為が問題となるのは、法人が不法に他人に損害を与えた場合(=法人に不法行為責任が発生する場合)である。
民法第44条第1項では「理事などの代表機関が職務を行なうにつき他人に加えたる損害は法人が賠償する責任を負う」と規定して、法人が不法行為責任を負うことを明記している(詳しくは法人の不法行為責任へ)。

しかし、仮に上記の「職務を行なうにつき」という言葉を厳格に解釈するならば、そもそも理事が不法に他人に損害を与える行為自体が「職務」の範囲から除外されるという問題が生じる。
(不法に他人に損害を与える行為は、もはや法人の代表機関としての行為には該当しない、と考えることができる)
しかし、それでは法人の不法行為責任が発生するケースは存在しないことになってしまい、法人の不法行為責任を規定した民法第44条第1項が無意味なものとなる。
そこで判例では、「職務を行なうにつき」という言葉を次のように広く解釈している。

1.外形上「職務行為」と見える行為は、「職務を行なうにつき」に含める。
2.社会通念上「職務行為に関連する行為」は「職務を行なうにつき」に含める。

このように「職務を行なうにつき」という言葉を広く解釈することにより、法人の不法行為責任が成立する範囲を拡大し、法人の不法行為による被害者を救済しているのである。

なお、職務行為という言葉は、上記の1.と2.を合わせた意味で使用されることがある。本来職務行為とは、上述のように法人の代表機関の正当な行為のことを指すのであるが、法人の不法行為責任を論じる場合には、民法第44条第1項が適用されるすべての行為(上記1.と2.)を「職務行為」と呼ぶことが多いので、注意したい。

-- 本文のリンク用語の解説 --

法人

私法上の概念で、自然人以外で、法律上の権利・義務の主体となることを認められた団体・財産をいう。

法人の設立は、法律の規定によらなければならないとされている。

例えば、一般社団法人、一般財団法人、株式会社、学校法人、宗教法人、管理組合法人などはすべて法人である。

理事(法人の〜)

法人のすべての行為について代表する権限を持ち、法人の運営を行なう者のこと。

法人は、1名または数名の理事を置くこととされている。また、理事の代表権は法人のすべての行為に及ぶのが原則であるが、法人は、定款、寄附行為または社員総会の決議により、理事の代表権に制限を設けることができる。

定款

一般社団法人、一般財団法人、株式会社等の基本的な規則またはそれを記した記録をいう。

それぞれの法人の設立の際に定められるのが通例である。

定款で定められる事項は、法人の種類等によって異なるが、目的、事務所所在地、組織、会計などが規定されている。

法人の権利能力・行為能力

民法は、「法人は法令の規定に従い、定款又は寄附行為に定められた目的の範囲内において、権利を有し義務を負う」と規定している。
この規定は、法人の権利能力の範囲を制限し、それと同時に法人の行為能力の範囲をも定めた規定であると解されている(判例、通説)。

すなわち、定款または寄附行為に記載された目的を超えた行為を法人の代表者(理事など)が行なった場合には、その代表者の行為は、法人の権利能力(および行為能力)の範囲を超えるので、その代表者の行為は法人に帰属しないという趣旨である。

しかしながら、実際には代表者が一見「目的の範囲」を超える行為を行なうことは多く見られるので、これをどのように解釈すべきかが問題となる。

1.目的の範囲を一見超えていると見られる代表者の行為
定款には記載のない種類の行為を代表者が行なった場合について、判例では「目的の範囲」を極力拡大して解釈することにより、代表者の行為を法人の行為として法人に帰属させている(例えば、会社の政治献金を「目的の範囲内」と解釈する)。

2.代表者の不法行為
代表者が「職務を行うについて」第三者に損害を与えた場合には、法人がその不法行為について損害賠償責任を負う。この場合にも、判例は、代表者の職務を広く解釈し、法人の損害賠償責任の範囲を広くしている(詳しくは法人の不法行為責任へ)。

法人の不法行為責任

一般社団法人および一般財団法人に関する法律は、「法人は、代表理事その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」と規定している。

この規定について、法人実在説の立場からは、法人が社会的実在である以上、法人自身が不法行為を行なうことは当然にあり得るので、目的の範囲内で法人は損害賠償責任を負うのが当然であると解釈されている(ただし、法人擬制説・法人否認説では代表者の不法行為について、法人に責任を負わせた特例的な規定であると解釈されている)。

法人の不法責任については、「その職務を行うについて」という部分の解釈が重要である。もし代表者の職務執行の範囲を厳格に解釈するならば、職務執行に「不法行為」が含まれることは稀であるから、判例では、理事の職務執行の範囲が広く解釈されている。たとえば判例は、「外形上、理事の職務行為と認められるもの、および社会通念上その職務行為に関連するもの」を理事の職務執行とし(これを外形理論という)、法人と取引をする相手方を保護している。

なお、法人が不法行為責任を負う場合でも、理事個人も個人として不法行為責任を負うものとされている(判例)。