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最終更新日:2022/4/15

所有者不明建物管理命令

しょゆうしゃふめいたてものかんりめいれい

所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができない建物(共有の場合には知ることができない共有持分)について、管理の必要性があるときに、裁判所が、管理人(所有者不明建物管理人)を選任し、その建物の管理を命令する処分。民法の改正によって創設された制度である(2023年4月1日施行)。土地についても類似の制度(所有者不明土地管理命令)がある。

所有者の所在が不明な建物等の管理・処分を行なうための制度として、裁判所が、不在者財産管理人や相続財産管理人を選任して管理・処分する仕組みがある。しかしこれらは、対象者の財産全般を管理する仕組みであって、特定の建物等を管理する場合には利用できない。所有者不明建物管理命令は、その必要に応えるべく創設された制度である。

所有者不明建物管理命令は、所有者不明建物の利害関係人の請求によって、裁判所が、i)調査を尽くしても所有者またはその所在を知ることができないこと、ii)管理状況等に照らし管理人による管理の必要性があること、の両方を認めた場合に決定される。その効力は、所有者不明建物のほか、建物にある所有者の動産、管理人が得た金銭等の財産(売却代金等)にも及ぶ。

所有者不明建物等の管理権限は、所有者不明建物管理人に専属する(訴訟の当事者にもなる)。この場合、保存行為や建物等の性質を変えない利用・改良行為は自身の判断で行なえるが、これらの範囲を超える行為(例えば建物の取り壊し)をするには、裁判所の許可が必要である。また、所有者不明建物管理人は、所有者に対して善良な管理者の注意義務を、共有持分に係る管理人は、共有者全員に対して誠実かつ公平な権限行使義務を負う。

なお、区分所有建物については、所有者不明建物管理命令は適用されない。

-- 本文のリンク用語の解説 --

所有者不明土地管理命令

所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができない土地(共有の場合には知ることができない共有持分)について、管理の必要性があるときに、裁判所が、管理人(所有者不明土地管理人)を選任し、その土地の管理を命令する処分。民法の改正によって創設された制度である(2023年4月1日施行)。 所有者の所在が不明な土地等の管理・処分を行なうための制度として、裁判所が、不在者財産管理人や相続財産管理人を選任して管理・処分する仕組みがある。しかしこれらは、対象者の財産全般を管理する仕組みであって、特定の土地等を管理する場合には利用できない。所有者不明土地管理命令は、その必要に応えるべく創設された制度である。 所有者不明土地管理命令は、所有者不明土地の利害関係人の請求によって、裁判所が、i)調査を尽くしても所有者またはその所在を知ることができないこと、ii)管理状況等に照らし管理人による管理の必要性があること、の両方を認めた場合に決定される。その効力は、所有者不明土地のほか、土地にある所有者の動産、管理人が得た金銭等の財産(売却代金等)にも及ぶ。 所有者不明土地等の管理権限は、所有者不明土地管理人に専属する(訴訟の当事者にもなる)。この場合、保存行為や土地等の性質を変えない利用・改良行為は自身の判断で行なえるが、これらの範囲を超える行為(例えば売却)をするには、裁判所の許可が必要である。また、所有者不明土地管理人は、所有者に対して善良な管理者の注意義務を、共有持分に係る管理人は、共有者全員に対して誠実かつ公平な権限行使義務を負う。 なお、建物についても類似の制度(所有者不明建物管理命令)がある。

区分所有建物

区分所有建物とは、構造上区分され、独立して住居・店舗・事務所・倉庫等の用途に供することができる数個の部分から構成されているような建物のことである。

区分所有建物となるためには次の2つの要件を満たすことが必要である。

1.建物の各部分に構造上の独立性があること
これは、建物の各部分が他の部分と壁等で完全に遮断されていることを指している。ふすま、障子、間仕切りなどによる遮断では足りない。

2.建物の各部分に利用上の独立性があること
これは、建物の各部分が、他の部分から完全に独立して、用途を果たすことを意味している。例えば居住用の建物であれば、独立した各部分がそれぞれ一つの住居として使用可能であるということである。

上記1.と2.を満たすような建物の各部分について、それぞれ別個の所有権が成立しているとき、その建物は「区分所有建物」と呼ばれる。区分所有建物については、民法の特別法である区分所有法が適用される。

代表的なものとしては分譲マンションが区分所有建物である。しかし分譲マンションに限らず、オフィスビル・商業店舗・倉庫等であっても、上記1.と2.を満たし、建物の独立した各部分について別個の所有権が成立しているならば区分所有建物となる。

なお区分所有建物では、建物の独立した各部分は「専有部分」と呼ばれる。
また、この専有部分を所有する者のことを「区分所有者」という。

廊下・エレベータ・階段などのように区分所有者が共同で利用する建物の部分は「共用部分」と呼ばれ、区分所有者が共有する。

また建物の敷地も、区分所有者の共有となる(ただし土地権利が借地権である場合には「準共有」となる)。このとき区分所有者が取得している敷地の共有持分は「敷地利用権」と呼ばれる。

従って区分所有建物においては、区分所有者は、専有部分の所有権、共用部分の共有持分、敷地の共有持分という3種類の権利を持っていることになる。