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最終更新日:2017/12/8

双務契約

そうむけいやく

契約当事者の双方がお互いに対価性のある債務を負担する契約をいう。売買、賃貸借などの契約はこれに該当する。これに対して、贈与のような当事者の一方のみが債務を負担する契約を「片務契約」という。

双務契約においては、双方の債務履行が密接な関係にあるから、相手の給付があるまでは自分の債務を履行しないとの主張(同時履行の抗弁権)が認められているほか、一方の債務の消滅等において他方の債務をどうするか(危険負担)などが問題となる。

-- 本文のリンク用語の解説 --

契約

対立する2個以上の意思表示の合致によって成立する法律行為のこと。

具体的には、売買契約、賃貸借契約、請負契約などのように、一方が申し込み、他方が承諾するという関係にある法律行為である。

債務

私法上の概念で、ある人(債権者)に対して一定の給付をなすべき義務をいう。

債務を負っているのが債務者である。

賃貸借

ある目的物を有償で使用収益させること、あるいはそれを約する契約をいう(賃貸借契約)。 賃貸借契約の締結によって、貸主(賃貸人)は目的物を使用収益させること、目的物を修繕すること等の債務を、借主(賃借人)は賃料を支払うこと、目的物を返還する際に原状回復すること等の債務をそれぞれ負うことになる(従って双務契約である)。

民法では、あらゆる賃貸借契約について、 1.契約期間は最長でも50年を超えることができない、2.存続期間の定めがない場合にはいつでも解約の申し出ができる、3.賃貸人の承諾がない限り賃借人は賃借権の譲渡・転貸ができない、4.目的物が不動産の場合には賃借人は登記がない限り第三者に対抗できない 等と規定している。

しかしながら、不動産の賃貸借は通常は長期にわたり、また、居住の安定を確保するために賃借人を保護すべしという社会的な要請も強い。そこで、不動産の賃貸借については、民法の一般原則をそのまま適用せず、その特例として、 1.契約期間を延長し借地については最低30年とする、2.契約の更新を拒絶するには正当事由を必要とする、3.裁判所の許可による賃借権の譲渡を可能にする、4.登記がない場合にも一定の要件のもとで対抗力を認める 等の規定を適用することとされている(借地借家法。なお、契約期間等については、定期借地権など特別の契約について例外がある)。

贈与

当事者の一方がある財産権を相手方に無償で移転する意思を表示し、相手方がそれを受諾する意思を表示し、双方の意思が合致することによって成立する契約のこと(民法第549条)。

贈与は諾成契約とされている。つまり、当事者の双方が意思を表示し、意思が合致するだけで成立する(財産が引き渡されたときに成立するのではない)。また、贈与は不要式契約なので、書面による必要はなく口頭でも成立する。

本来、贈与は好意・謝意などの動機で行なわれるものであるから、契約ではないとする考え方もあるが、わが国の民法では、贈与も契約であると構成したうえで、「書面による贈与」と「書面によらない贈与」に区分し、異なった取扱いをするという方法を採用している。

「書面による贈与」とは、贈与者による贈与の意思が現れた書面が存在する贈与である。書面による贈与は書面が存在する以上、もはや解除することができない。
「書面によらない贈与」は、原則的にいつでも解除することができるが、履行が終わった部分については解除できないとされている(民法第550条)。

同時履行の抗弁権

双務契約の当事者が、相手方が債務を提供するまでは自己の債務を履行しない、と主張できる権利をいう。 債務がお互いに対価の関係にあるとき、他方が履行しないのに一方だけを履行させるのは不公平だという考え方にもとづいて認められている。ただし、特約でどちらかの債務履行を先とする旨決められていることには主張できない。

同時履行の抗弁権がある間は、期限を過ぎて債務を履行しなくとも、履行遅滞とはならず、損害賠償義務や相手方の契約解除権は発生しない。また、訴訟において同時履行の抗弁権を主張すると、相手方には自分の弁済と引換えに給付を受けられるという判決(引換給付判決)がなされる。

公平確保のための権利であるから、双務契約の場合だけでなく、契約解除における原状回復義務(お互いに原状回復の義務を負う)、売主の瑕疵担保責任(担保責任の履行と代金の支払いは双務関係)などにも適用される。

危険負担

売買契約、請負契約のような双務契約(両当事者が債務を負う契約)によって成立した一方の債権が、契約後に責任のない理由で履行不能となったときに、反対側の債権が存続するかどうかの問題をいう。 反対債権が存続するか、存続しないかによって、危険をどちら側が負うかが決まる。

民法では、危険負担に関して原則として反対債権は消滅するとする。双務契約においては、2つの債権が牽連すると考えられるからであるが、この場合には履行不能となった債権の債務者が危険を負担することになる。
例えば、建物の建築請負契約では、請負者は代金を受け取る債権を、注文者は完成した建物の引渡しを受ける債権をそれぞれ有するが、建築中に天災で建物が滅失すれば注文者は債権を履行できなくなる。このとき反対債権(代金を受け取る債権)も消滅して、注文者の債務も解消するのである。つまり、危険は請負者(履行不能債権の債務者)が負担している。

だが、その例外として、民法では、契約の目的が特定物に関する物権の移転の場合などにおいては、反対債権は消滅しない(危険を負担するのは履行不能債権の債権者である)と規定されている。そして不動産売買はこれに当たる。買った宅地建物が天災で滅失したときなどでも、反対債権は消滅しないので、代金支払いの債務は残るのである。
そこで、通常は、「責任のない事由により発生する損失は、引渡し日の前日までは売主、引渡し日以降は買主の負担とし、買主が契約を締結した目的を達することができないときには契約を解除することができる」旨の特約を結び、民法の規定とは異なる危険負担を定めている。