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最終更新日:2023/9/13

役務提供型契約

えきむていきょうがたけいやく

私法上の概念で、役務(労働サービス)の提供に関する契約をいい、売買、賃貸借と並ぶ主要な契約類型のひとつである。民法で規定されている雇用、請負、委任、寄託のほか、商法上の仲立、問屋、運送などのための契約がこれに該当する。また、不動産取引の仲介(媒介)契約も役務提供型契約である。

役務提供型契約は、提供する役務・サービスの性質に応じて、有償・無償の別、成果物引渡の要否、報酬請求のあり方などについてさまざまなかたちがあり、発生する権利義務関係も多様である。そのため、民法で規定されている契約(典型契約)の既定によっては十分に対応できないのではないか、当事者間の交渉力等の違いによって利益を害することのないように配慮する必要があるのではないかなどの視点から、役務提供型契約の共通ルールを定めること等の必要性について議論がある。

-- 本文のリンク用語の解説 --

私法

法のうち市民相互の関係を規律付けるものをいう。 国民と国家との関係を規律付けるのが「公法」であり、法の体系は、私法と公法の大きな2つの類型に分けることができる。

私法は、市民の相互関係を対象とする規律であるから、自由平等の関係を基盤に、私益を調整することを目的とする。一方、公法は、支配服従の関係を定めて公益の実現をめざすことに特徴があるとされる。

私法の一般法は民法である。民法の基本原理は、 1.法の下の平等、2.私的財産権の絶対性、3.契約自由の原則(私的自治)、4.過失責任主義 であるとされるが、これらの原理はいずれも私法の基本的な特徴でもある。私法を構成する代表的な法律は、民法のほか、借地借家法、商法、会社法などである。

私法と公法とを区分することに対しては、私的活動に対する行政の関与が拡大することに伴って両者を区分する必然性が薄れたこと、労働法や産業法のような公益上の理由で市民相互の関係を規律付ける法律分野(社会法といわれ、私法と公法の中間的な性格を持つとされる)が出現したことなどにより、その意味を失ったという意見もあるが、法の本質的な性格を明確にする基本的な視点を提供すること、法概念を分析するための基盤となることなど、区分することの理論的な有効性はいまなお失われていない。

契約

対立する2個以上の意思表示の合致によって成立する法律行為のこと。

具体的には、売買契約、賃貸借契約、請負契約などのように、一方が申し込み、他方が承諾するという関係にある法律行為である。

賃貸借

ある目的物を有償で使用収益させること、あるいはそれを約する契約をいう(賃貸借契約)。 賃貸借契約の締結によって、貸主(賃貸人)は目的物を使用収益させること、目的物を修繕すること等の債務を、借主(賃借人)は賃料を支払うこと、目的物を返還する際に原状回復すること等の債務をそれぞれ負うことになる(従って双務契約である)。

民法では、あらゆる賃貸借契約について、 1.契約期間は最長でも50年を超えることができない、2.存続期間の定めがない場合にはいつでも解約の申し出ができる、3.賃貸人の承諾がない限り賃借人は賃借権の譲渡・転貸ができない、4.目的物が不動産の場合には賃借人は登記がない限り第三者に対抗できない 等と規定している。

しかしながら、不動産の賃貸借は通常は長期にわたり、また、居住の安定を確保するために賃借人を保護すべしという社会的な要請も強い。そこで、不動産の賃貸借については、民法の一般原則をそのまま適用せず、その特例として、 1.契約期間を延長し借地については最低30年とする、2.契約の更新を拒絶するには正当事由を必要とする、3.裁判所の許可による賃借権の譲渡を可能にする、4.登記がない場合にも一定の要件のもとで対抗力を認める 等の規定を適用することとされている(借地借家法。なお、契約期間等については、定期借地権など特別の契約について例外がある)。

寄託

特定物の保管を委託する契約。民法に規定されている契約のひとつで、当事者の一方が目的物の保管を委託し、相手がこれを承諾することによって成立する(諾成契約)。保管を引き受ける者が受寄者、保管を委託する者が寄託者、寄託する目的物が寄託物である。

寄託は契約によって成立するが、原則として、受寄者が寄託物を受け取るまでは契約を解除することができる。また、その沿革から、原則として無報酬と考えられているが、契約で有償の寄託にすることもできる。

受寄者は、無報酬の場合には「自己の財産におけると同一の注意」をもって、有償の場合には「善良なる管理者の注意」をもって、寄託物を保管する義務を負うほか、寄託者の承認なしに寄託物を使用しない、寄託者の承諾等なしに寄託物を第三者に保管させないなどの義務がある。一方、寄託者は、有償の場合には報酬を支払わなければならず、寄託物の性質・瑕疵によって受寄者が受けた損害を賠償するなどの義務を負う。

寄託者は、返還時期を定めた場合であってもいつでも寄託物の返還を請求できる。一方、受寄者は、期間の定めが無いときはいつでも、定めがあるときはやむを得ない事由がある場合を除いてその期限後に返還することができる。また、寄託物の損傷等による損害賠償や受寄者が支出した費用の償還は、寄託物の返還から一年以内に請求しなければならない。

なお、営業に伴なう寄託や寄託を業とする場合(倉庫営業)については、民法に優先して商法に定める規定が適用される。例えば、営業に伴う受寄者は、無報酬の場合であっても「善良な管理者の注意」をもって寄託物を保管しなければならないし、倉庫営業者は、寄託物の預り証券及び質入証券を発行しなければならない。

また、特殊な寄託として「消費寄託」がある。これは、銀行預金などのように、受寄者は寄託物を消費することができ、返還は寄託物と同種・同等・同量のものをもってする寄託である。

媒介契約

不動産の売買・交換・賃貸借の取引に関して、宅地建物取引業者が取引当事者の間に立ってその成立に向けて活動するという旨の契約をいい、売主または買主(賃貸借取引の場合には、貸主または借主)と宅地建物取引業者との間で締結される。

宅地建物取引業法は、媒介契約について、契約内容を記した書面の交付義務、媒介報酬の制限などを規定しているほか、媒介契約に従って行なう活動の方法等についてそのルールを定めている。