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最終更新日:2020/6/12

景観法

けいかんほう

良好な景観の形成を促進するための施策を定めた法律で、2004年6月に公布、同年12月から施行された。

この法律は、都市部だけでなく農村部等も対象にして、地域の個性を反映した柔軟な規制等によって景観の形成を図るための制度を定めており、景観に関する基本法とされる。

景観法に規定されている主な制度としては、

1.景観行政を担う主体としての景観行政団体
2.景観計画区域の指定、景観計画の策定、それにもとづく建築等の届出、デザイン・色彩に関する勧告・変更命令など
3.都市計画による景観地区の指定、建築等のデザイン・色彩、高さ等の総合的な規制、景観認定制度など
4.住民合意による景観協定
5.景観重要建造物景観重要樹木の指定・保全

などがある。

-- 本文のリンク用語の解説 --

景観行政団体

景観法に基づき行為規制等の権限を行使する都道府県・市町村のこと。具体的には、都道府県、指定都市、中核市を指す。

ただし、指定都市・中核市以外の市町村であっても、都道府県に代わって、景観計画、景観重要建造物、景観重要樹木、景観協定、景観整備機構の事務を処理することにつき都道府県とあらかじめ協議した市町村であれば、景観行政団体となる(景観法第7条第1項)。

景観計画区域

景観行政団体が策定する景観計画で定められた区域のこと(景観法第8条第2項第1号)。
景観計画区域では、行為の制限に関する事項(第8条第2項第3号)として、建築物・工作物の形態意匠の制限、建築物・工作物の高さの最高限度または最低限度の制限、壁面の位置の制限または建築物の敷地面積の最低限度などのうち必要なものが定められている(第8条第3項)。

景観計画区域内で次の行為をするときは、30日前までに景観行政団体の長に届出を行なうことが必要である(景観法第16条第1項、第18条第1項)。 1.建築物の新築、増築、改築もしくは移転、外観を変更することとなる修繕もしくは模様替または色彩の変更
2.工作物の新設、増築、改築もしくは移転、外観を変更することとなる修繕もしくは模様替または色彩の変更
3.開発行為その他政令で定める行為
4.良好な景観の形成に支障を及ぼす恐れのある行為として景観計画に従い景観行政団体の条例で定める行為

この届出に対して、景観行政団体の長は、設計の変更等の措置を命じることができる(景観法第17条第1項)。この命令に従わない場合、景観行政団体の長は、原状回復を命令することができ、それにも従わないときは自ら原状回復等を行なうことができる(景観法第17条第5項、第6項)。
このように景観計画区域内での行為制限には、ある程度の強制力が付与されていることに特徴がある。また原状回復命令(景観法第17条第5項)に違反した場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金という罰則が予定されている(景観法第100条)。

景観計画

景観行政団体が策定する良好な景観の形成に関する計画のこと(景観法第8条第1項)。景観計画は、都市、農山漁村その他市街地または集落地域と、これと一体となって景観を形成している区域について定められる。この景観計画が定められた区域のことを「景観計画区域」という。

景観計画では、景観計画の区域(景観計画区域)、良好な景観の形成に関する方針、良好な景観の形成のための行為の制限に関する事項その他が定められる(第8条第2項)。
特に行為の制限に関する事項(第8条第2項第3号)については、 1.建築物または工作物の形態または色彩その他の意匠の制限
2.建築物または工作物の高さの最高限度または最低限度
3.壁面の位置の制限または建築物の敷地面積の最低限度
4.その他第16条第1項の届出を要する行為ごとの良好な景観の形成のための制限 などの制限のうちで必要なものを定めることができる(第8条第3項)。

建築

「建築物を新築し、増築し、改築し、または移転すること」と定義されている(建築基準法第2条第13号)。

都市計画

土地利用、都市施設の整備、市街地開発事業に関する計画であって、都市計画の決定手続により定められた計画のこと(都市計画法第4条第1号)。
具体的には都市計画とは次の1.から11.のことである。

1.都市計画区域の整備、開発及び保全の方針(都市計画法第6条の2)
2.都市再開発方針等(同法第7条の2)
3.区域区分(同法第7条)
4.地域地区(同法第8条)
5.促進区域(同法第10条の2)
6.遊休土地転換利用促進地区(同法第10条の3)
7.被災市街地復興推進地域(同法第10条の4)
8.都市施設(同法第11条)
9.市街地開発事業(同法第12条)
10.市街地開発事業等予定区域(同法第12条の2)
11.地区計画等(同法第12条の4) 注:
・上記1.から11.の都市計画は、都市計画区域で定めることとされている。ただし上記8.の都市施設については特に必要がある場合には、都市計画区域の外で定めることができる(同法第11条第1項)。
・上記4.の地域地区は「用途地域」「特別用途地区」「高度地区」「高度利用地区」「特定街区」「防火地域」「準防火地域」「美観地区」「風致地区」「特定用途制限地域」「高層住居誘導地区」などの多様な地域・地区・街区の総称である。
・上記1.から11.の都市計画は都道府県または市町村が定める(詳しくは都市計画の決定主体へ)。

建築

「建築物を新築し、増築し、改築し、または移転すること」と定義されている(建築基準法第2条第13号)。

景観重要建造物

景観計画区域内の良好な景観の形成に重要な建造物であって、景観行政団体の長が指定した建造物のこと(これと一体となって良好な景観を形成している土地その他の物件を含む)。
景観行政団体の長は、景観計画の景観重要建造物の指定の方針に即して、景観重要建造物を指定する(法第19条第1項)。

景観重要建造物の増築、改築、移転もしくは除却、外観を変更することとなる修繕もしくは模様替え、または色彩の変更をするには、景観行政団体の長の許可が必要である(景観法第22条)。

なお、文化財保護法の規定により国宝、重要文化財、特別史跡名勝天然記念物または史跡名勝天然記念物として指定され、または仮指定された建造物については、景観重要建造物に指定することができない(法第19条3項) 。

景観重要樹木

景観計画区域内の良好な景観の形成に重要な樹木であって、景観行政団体の長が指定した樹木のこと。
景観行政団体の長は、景観計画の景観重要樹木の指定の方針に即して、景観重要樹木を指定する(法第28条第1項)。
景観重要樹木の伐採または移植には、景観行政団体の長の許可が必要である(景観法第30条第1項)。

なお、文化財保護法の規定により特別史跡名勝天然記念物または史跡名勝天然記念物として指定され、または仮指定された樹木については、景観重要樹木に指定することができない(景観法第30条第2項)。