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最終更新日:2024/1/12

数量指示売買

すうりょうしじばいばい

数量を基礎にして価格が決定されている売買のこと。

1.数量指示売買の定義
数量指示売買とは、「当事者において売買の対象となる物が実際に持つ数量を確保するために、その一定の面積(容積、重量、員数、尺度なども)があるということが契約に表示され、かつ、この数量を基礎にして代金額が定められた売買」であるとされている(最高裁判決昭和43年8月20日)。
このように、ある売買契約が数量指示売買と認められるためには、「当事者の数量確保の意思」、「数量の表示」、「数量をもとにした代金額の決定」、という3要素が必要である。

2.数量指示売買で数量が不足したとき
数量が不足したとき、買主は、民法第562条・第563条・第564条による売主の契約不適合責任を追及することができる。
これは、「数量の不足または物の一部滅失の場合における売主の担保責任」と呼ばれる売主の責任である(民法第562条)。
具体的には、善意(数量の不足を知らなかった)の買主は、売主に対して、追完請求、代金減額請求、契約解除、損害賠償請求ができる。

つまり、数量指示売買で数量不足であれば、善意の買主は目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完、損害賠償を請求でき、履行の追完を催告したうえで代金減額を請求でき、契約を解除できる。このように、善意の買主の権利が非常に強いということができる。

-- 本文のリンク用語の解説 --

売買契約

当事者の一方が、ある財産権を相手方に移転する意思を表示し、相手方がその代金を支払う意思を表示し、双方の意思が合致することで成立する契約のこと(民法第555条)。

売買契約は諾成契約とされている。つまり、当事者の双方が意思を表示し、意思が合致するだけで成立する(財産が引き渡されたときに成立するのではない)。
また、売買契約は不要式契約なので、書面による必要はなく口頭でも成立する。
さらに、売買契約は財産権を移転する契約であるが、その対価として交付されるのは金銭でなければならない(金銭以外の物を対価として交付すると「交換契約」となってしまう)。

当事者の双方の意思の合致により売買契約が成立したとき、売主には「財産権移転義務」が発生し、買主には「代金支払義務」が発生する。両方の義務の履行は「同時履行の関係」に立つとされる。

売主

不動産の売買契約において、不動産を売る人(または法人)を「売主」という。

また不動産広告においては、取引態様の一つとして「売主」という用語が使用される。

この取引態様としての「売主」とは、取引される不動産の所有者(または不動産を転売する権限を有する者)のことである。

数量の不足または物の一部滅失の場合における売主の担保責任

売買契約において、数量の不足または目的物の一部滅失がある場合に、売主が負うべき契約不適合責任。

責任を負わせるには、買主が、追完請求(不足数量の追加や滅失の補修の請求)、代金減額請求、損害賠償請求、解除権の行使をしなければならない。

これらの請求等を行なうためは、原則として契約不適合を知った時から1年以内に不適合である旨を通知しなければならないとしている。ただし、売主が不適合を知っていたときまたは重大な過失によって知らなかったときはその限りではないとされている。

なお、数量不足による契約不適合を主張するためには、売買契約が「数量指示売買」であることが必要とされている。数量指示売買とは、当事者が或る数量を確保するため契約において数量を表示し、この数量をもとに売買代金が定められた売買である。

代金減額請求

売買契約の履行において、引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しない場合に、買主が売主に対して、代金の減額を請求すること。

代金の減額を請求する権利は、契約不適合を原因とする債務不履行に対する請求権のひとつである。

代金減額請求は、まずは履行の追完を催告し、追完されないときに行なうことができる。もっとも、催告しても追完を受ける見込みがない場合などは、催告なしに減額請求することができるとされる。

代金減額請求をするためには、原則として、不適合を知った時から一年以内に不適合である旨を通知しなければならない。

このルールは、民法(債権関係)改正(施行は2020年4月1日から)によって明確化された。

損害賠償

違法行為によって損害が生じた場合に、その損害を填補することをいう。

債務不履行や不法行為などの違法な事実があり、その事実と損害の発生とに因果関係があれば損害賠償義務を負うことになる。その損害は、財産的か精神的かを問わず、積極的(実際に発生した損害)か消極的(逸失利益など)かも問わず填補の対象となる。
ただし、その範囲は、通常生ずべき損害とされ、当事者に予見可能性がない損害は対象とはならない(相当因果関係、因果の連鎖は無限に続くため、予見可能性の範囲に留めるという趣旨)。

損害賠償は原則として金銭でなされる。また、損害を受けた者に過失があるときは賠償額は減額され(過失相殺)、損害と同時に利益もあれば賠償額から控除される(損益相殺)。

なお、同じように損害の填補であっても、適法な行為(公権力の行使)によって生じた不利益に対する填補は、「損失補償」といわれて区別される。