最終更新日:2023/10/24
特例事業(不動産特定共同事業における〜)
とくれいじぎょう(ふどうさんとくていきょうどうじぎょうにおける〜)不動産特定共同事業契約に基づく収益・利益の分配を専ら行なうことを目的とする法人(SPC、特別目的会社)が実施するものをいう。不動産特定共同事業法に基づく制度である。
SPCが実施する特例事業については倒産隔離機能等が働き、同事業に対する投資は、通常の不動産特定共同事業に対する投資よりもリスクが小さいと考えられている。
特例事業を実施する場合には、事業実施のための許可は不要で、届出で足りる。一方で、SPCは、特例事業のための不動産取引に係る業務及び契約締結の勧誘業務について、それぞれの業務の受託に関して許可を受けた不動産特定共同事業者に委託しなければならない。この場合、不動産取引の委託先は一つに限る。不動産取引業務を受託する許可を受けた事業者を第三号事業者、契約契約の代理・媒介業務を受託する許可を受けた事業者を第四号事業者という。
特例事業者は、宅地建物取引業の営業許可を受け、あるいは宅地建物取引士を置く必要はないが、みなし宅地建物取引業者として、営業保証金の供託、受領手付金額の制限などの業務規制が課せられている。
なお、特例事業者と締結した不動産特定共同事業契約に基づく権利は、通常の不動産特定共同事業契約に基づく権利と違って、金融商品取引法のみなし有価証券とされ、その取引について同法の規制が適用される。
SPC
特別目的会社
通常の会社と違って、利益を得ることを目的としない。資産の流動化に関する法律(資産流動化法)による「特定目的会社」のほか、定款で事業目的を限定した株式会社形態のものがある。特定目的会社を含むが、もっと幅広い概念である。
特別目的会社は、保有する資産を事業体から切り離して資金を確保するために活用されることが多いが、この場合に、元の資産保有者が特別目的会社に深く関与すると資産切り離しの実態を確保できず、事業体に対する監査等に支障が生じる。そのため、関与の許容範囲を定めるルールが制定されている(5%ルールはその一つ)。
不動産特定共同事業法
契約
具体的には、売買契約、賃貸借契約、請負契約などのように、一方が申し込み、他方が承諾するという関係にある法律行為である。
宅地建物取引業法
この法律に定められている主な内容は、宅地建物取引を営業する者に対する免許制度のほか、宅地建物取引士制度、営業保証金制度、業務を実施する場合の禁止・遵守事項などである。これによって、宅地建物取引業務の適正な運営、宅地および建物の取引の公正の確保および宅地建物取引業の健全な発達の促進を図ることとされている。
宅地建物取引士
一定以上の知識・経験を持つ者として公的に認められた者である。宅地建物取引業者は、事務所ごとに従事者5名に対して1名以上の割合で、専任の宅地建物取引士を置かなければならない(詳しくは宅地建物取引士の設置義務へ)。
宅地建物取引において特に重要な次の3つの業務は、宅地建物取引士だけが行なうことができるとされている(宅地建物取引士ではない者はこれらの業務を行なうことができない)。 1.重要事項説明
2.重要事項説明書への記名・押印
3.37条書面への記名・押印
宅地建物取引士となるためには、具体的には次の1)から5)の条件を満たす必要がある。 1)宅地建物取引士資格試験に合格すること
宅地建物取引業に関して必要な知識に関する資格試験である宅地建物取引士資格試験に合格することが必要である。なお、一定の要件を満たす者については宅地建物取引士資格試験の一部免除の制度がある。
2)都道府県知事に登録を申請すること
この場合、宅地建物取引に関して2年以上の実務経験を有しない者であるときは、「登録実務講習」を受講し修了する必要がある。
3)都道府県知事の登録を受けること
登録を受けるには一定の欠格事由に該当しないことが必要である。
4)宅地建物取引士証の交付を申請すること
宅地建物取引士証の交付を申請する日が宅地建物取引士資格試験に合格した日から1年を超えている場合には、都道府県知事の定める「法定講習」を受講する義務がある。
5)宅地建物取引士証の交付を受けること
氏名、住所、生年月日、有効期間の満了する日等が記載されている宅地建物取引士証の交付を受けて初めて正式に宅地建物取引士となる(氏名において旧姓が併記された宅地建物取引士証の交付を受けた日以降は、書面への記名等の業務において旧姓を使用してよいこととされている)。 宅地建物取引士は、宅地建物の取引の専門家として、購入者等の利益の保護および円滑な宅地建物の流通に資するよう公正誠実に業務を処理するほか、信用・品位を害するような行為をしないこと、必要な知識・能力の維持向上に努めることとされている。
営業保証金
営業保証金の額は、主たる事務所につき1,000万円、その他の事務所につき事務所ごとに500万円である。
なお、宅地建物取引業保証協会の社員は営業保証金を供託する必要はなく、代わりに同協会に対して弁済業務保証金分担金を納付しなければならないとされている。分担金の額は、主たる事務所につき60万円、その他の事務所につき事務所ごとに30万円である。
供託
供託は、弁済供託(債務者が債権者の受領拒絶、受領不能、債権者を確知できない場合等に弁済を目的としてするもの)、担保保証供託(後の支払を確保を担保するもの)、執行供託(民事執行の目的たる金銭または換価代金を当事者に交付するためのもの)、保管供託(他人の物を直ちに処分し得ないときに一時保管するためのもの)、没収供託(公職選挙立候補者の供託のように没収に備えるためのもの)の5種類に分類できる。また、そのための手続きは、供託法に定められている。
宅地建物取引業を営む場合には、営業保証金を供託しなければならないとされているが、宅地建物取引業保証協会の社員はその必要はなく、別途弁済業務保証金分担金を納付することとされている。
金融商品取引法
出資等を受けて不動産取引を行ない、その収益を分配する事業の仕組みを定めた法律で、そのような事業を「不動産特定共同事業」という。1994(平成6)年に制定された。 不動産特定共同事業は、宅地建物取引業の特別な形態で、倒産隔離できない1号事業と、倒産隔離されたSPC方式(特定目的法人を設立する方式)による特例事業とがある。 不動産特定共同事業を営むには、原則として国土交通大臣等の許可が必要で、宅地建物取引業の免許を受けていること、法人であること、一定額以上の資本金を有していることなどの要件を満たさなければならないとされる。ただし、出資総額及び一人当たりの出資額が小さい小規模不動産特定共同事業については、登録によって営業することができる。 また業務に関しては、不動産の適正かつ合理的な利用の確保に努め、投機的取引の抑制を図るよう配慮すること、広告・勧誘等についての一定の規制・制限を遵守すること、契約に当たって一定の説明を書面で行なうことなどが定められている。 この法律の制定により、組合方式等による不動産の証券化を円滑に進めるためのルールが明確となり、投資家の資金を活用した不動産の流動化が促進されることとなった。 なお、特例事業の不動産共同事業契約に基づく権利は金融商品取引法の「みなし証券」として同法が適用されるほか、不動産特定共同事業法の対象となる商品のすべてについて、金融商品取引法に定める損失補塡等の禁止及び適合性の原則の規定が準用によって適用される。