不動産用語集|R.E.Words by(株)不動産流通研究所

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最終更新日:2008/10/29

理事の代表権の濫用

りじのだいひょうけんのらんよう

社団法人財団法人の理事が、代表権の範囲を超えて、法人を代表する行為を行なった場合については、その代表行為が法人の「目的の範囲」を明らかに逸脱するものであるときは、その代表行為に対しては法人は責任を負うことはない(詳しくは法人の権利能力・行為能力へ)。

また、理事の代表権が定款等により制限されている場合については、その定款等による制限を知らない(=善意の)相手方は、民法第54条により保護される(詳しくは理事の代表権の制限へ)。

しかしながら、理事が法人の「目的の範囲内」において、定款等による制限の枠内で代表として行動した場合であっても、理事が自己の私利私欲を目的として行動する場合があり得る(例えば法人の理事が、法人所有の不動産を勝手に売却した場合など)。このように、理事がもっぱら自己の利益のために代表行為を行なうことを「代表権の濫用(らんよう)」という。

代表権が濫用された場合については、法人としては損失を受けないためにその代表行為の効力を否定するべきであるし、他方、取引の相手方は通常そうした理事の真意を知らないのであるから、こうした相手方は原則的に保護すべきである。しかしこの点につき、民法上では明文を欠くため、問題となる。

この点につき判例では、心裡留保に関する民法第93条但書を類推適用することとしている(昭和38年9月5日最高裁判決など)。

本来、第93条但書は、本人が冗談などの真意と異なる意思表示をした場合には、その真意を知らず、かつ知らないことにつき過失がない(=善意かつ無過失の)相手方を保護するという規定である(詳しくは心裡留保へ)。
判例はこの第93条但書を理事の代表権の濫用にも類推適用し、濫用があることを知らずかつ知らないことにつき無過失の相手方を保護するとしているのである。

もっとも、理事の代表権の濫用のケースでは、理事は代表行為の効果が法人に帰属することを完全に知っているのであるから、冗談などの心裡留保とはかなり状況が異なるのであるが、判例では取引の安全を保障するために、第93条但書の類推適用により、濫用について善意かつ無過失の相手方を保護していると考えることができる。

-- 本文のリンク用語の解説 --

社団法人

民法第34条にもとづき設立された非営利法人や、民法第35条にもとづき設立された営利法人のことを「社団法人」という。
社団法人は、人の団体に対して法人格が与えられたものであり、社員が不可欠の要素であって、社員総会によって意思決定を行なう。また法人の運営等に関する規則は定款として定められている。

財団法人

民法第34条により設立された非営利の法人であって、財産に対して法人格が与えられたもの。財団法人はその財産に着目して法人格が与えられたものであり、社員は財団設立の要素ではない。財団法人の運営は寄附行為にもとづいて理事が行なう。

法人の権利能力・行為能力

民法第43条では「法人は法令の規定に従い、定款又は寄附行為に定められた目的の範囲内において、権利を有し義務を負う」と規定している。
この規定は、法人の権利能力の範囲を制限し、それと同時に法人の行為能力の範囲をも定めた規定であると解されている(判例、通説)。

すなわち、定款または寄附行為に記載された目的を超えた行為を法人の代表機関(=理事など)が行なった場合には、その理事などの行為は、法人の権利能力(および行為能力)の範囲を超えるので、その理事などの行為は法人に帰属しないという趣旨である。

しかしながら実際には法人の理事が一見「目的の範囲」を超える行為を行なうことは多く見られるので、これをどのように解釈すべきかが問題となる。

1:目的の範囲を一見超えていると見られる理事の行為
定款には記載のない種類の行為を理事が行なった場合について、判例では、「目的の範囲」を極力拡大して解釈することにより、理事の行為を法人の行為として法人に帰属させている(例えば会社の政治献金を「目的の範囲内」と解釈する。)

2:理事の不法行為
理事が「目的の範囲内」の行為によって、不法に他者に損害を与えた場合には、法人がその不法行為について損害賠償責任を負う(民法第44条第1項)。この場合にも、理事の職務行為を広く解釈することにより、法人の損害賠償責任の範囲を広く解釈する(詳しくは法人の不法行為責任へ)。

理事の代表権の制限

社団法人や財団法人の理事は、法人のすべての事務について代表する権限を持つ(民法第53条)。
しかし、この理事の代表権は定款、寄附行為または社員総会の決議によって制限されることがある(民法第53条但書)。

ただし、法人と取引をする相手方は、理事の代表権には制限がないと信じるのが普通であるから、理事の代表権が定款等によって制限されていることを知らない(=善意の)相手方に対しては、法人は理事の代表権が制限されていると主張することができない(民法第54条)。
つまり善意の相手方は民法第54条によって保護されているということができる。

また善意といえないような相手方であっても、民法第110条の類推適用によって救済される場合がある。

心裡留保

本人の真意とは異なる内容を、本人が外部に表示することをいう。
例えば、ある品物を買う意思がまったくないのに、冗談で「その品物を買います」と店員に言う行為が、この心裡留保に該当する。心裡留保とは「真意を心のうちに留めて置く」という意味である。

このような心裡留保による意思表示は、有効な内心的効果意思を欠くものとして無効とするという考え方もありうるが、民法ではこのような真意と異なる意思表示をする本人は法の保護に値しないとの趣旨により、心裡留保にもとづく意思表示を原則的に有効と定めている(民法第93条本文)。

ただし、心裡留保にもとづく意思表示の相手方が、本人の真意に気付いていた場合(または通常の注意力を働かせれば真意に気付いて当然であった場合)には、相手方を保護する必要がないので、心裡留保にもとづく意思表示は無効となる(民法第93条但書)。