不動産用語集|R.E.Words by(株)不動産流通研究所

このページを印刷する

最終更新日:2008/10/29

理事の代表権の法令による制限

りじのだいひょうけんのほうれいによるせいげん

理事の代表権は定款等によって制限される場合があり、この制限を知らない(=善意の)相手方は民法第54条によって保護される(詳しくは理事の代表権の制限へ)。
しかし、理事の代表権が法令によって制限されている場合には、この法令による制限を知らない相手方は民法第54条による保護を受けることができない。その理由は、法令による制限がある場合には、その制限を超えて理事が代表行為を行なうことが初めから不可能だからである。
しかし、こうした場合であっても、取引の相手方は民法第110条の類推適用によって救済される場合がある。

-- 本文のリンク用語の解説 --

定款

社団法人に関する根本的な規則を定めた書面のこと(民法第37条)。
定款は社団法人の設立者が作成する。定款の必要的記載事項は、目的、名称、事務所、資産に関する規定、理事の任免に関する規定、社員資格の得喪に関する規定である。

理事の代表権の制限

社団法人や財団法人の理事は、法人のすべての事務について代表する権限を持つ(民法第53条)。
しかし、この理事の代表権は定款、寄附行為または社員総会の決議によって制限されることがある(民法第53条但書)。

ただし、法人と取引をする相手方は、理事の代表権には制限がないと信じるのが普通であるから、理事の代表権が定款等によって制限されていることを知らない(=善意の)相手方に対しては、法人は理事の代表権が制限されていると主張することができない(民法第54条)。
つまり善意の相手方は民法第54条によって保護されているということができる。

また善意といえないような相手方であっても、民法第110条の類推適用によって救済される場合がある。

民法第110条の類推適用

民法第110条は、権限踰越の表見代理を定めた規定である。権限踰越の表見代理とは、代理人が本人から与えられた基本権限の範囲を超えて、基本権限外の行為をした場合に、相手方が基本権限内の行為であると信じ、そう信じることについて正当の理由があるときは、代理人と相手方との取引の効果を本人に帰属させるという制度である。
このように民法第110条は本人と代理人(正確には表見代理人)との関係に関する規定であるが、法人と代表機関(理事など)との関係にもこの民法第110条が類推適用される場合がある。具体的には次のとおりである。

1)理事の代表権の制限について
理事の代表権は定款などにより制限することが可能である(民法第53条但書)が、法人と取引をする相手方が、理事の代表権が定款等によって制限されていることを知らない場合(=善意である場合)には、法人は理事の代表権が定款などで制限されていると主張することができない(民法第54条)。
しかし、相手方が善意とは言えないような場合には、相手方は民法第54条による保護を受けることができない。そこで判例ではこのような事例について民法第110条を類推適用することとしている。

例えば法人Aの理事Bが、本来は定款により土地の処分には理事会の承認が必要であるのに、この理事会の承認があったと偽って、相手方Cに土地を売却してしまったとする。このときCは理事会の承認が必要という「定款による代表権の制限」を知っていたのであるから、もはや民法第54条の保護を受けることはできない。
そこで判例では、法人Aと理事Bとの関係が、本人と表見代理人との関係と同一の構造を持っていることに着目し、この場合に民法第110条を類推適用する。

具体的には、相手方Cは、理事Bが、理事会の承認を得たことにより土地を売却するという正当な権限を持っているものと信じ、そう信じるにつき過失がない(つまりCが善意無過失)のであれば、Cは民法第110条の「正当な理由」を具備したことになり、民法第110条により保護される。(昭和60年11月29日最高裁判決など)

2)理事の代表権の法令による制限について
上記1)とは異なり、理事の代表権が法令で制限されている場合には、民法第54条を適用する可能性がはじめから存在しない。
〔法令による代表権の制限がある場合には、その制限を超えて、理事が代表行為を行なうことが法律上初めから不可能だからである〕
そこでこうした場合にも、判例は民法第110条の類推適用によって相手方を救済することを認めている。例えば、地方自治体Dの首長Eが、自分の借金返済にあてるため、法律上必要な手続を経ないままに、自治体名義でFから金銭を借り入れたとする。相手方Fは、首長Eが法律上必要な手続を正式に経ていると信じ、そう信じるにつき過失がない(つまりFが善意無過失)のであれば、Fは民法第110条の「正当な理由」を具備したことになり、民法第110条により保護される。