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最終更新日:2023/10/24

国際会計基準

こくさいかいけいきじゅん

国際会計基準審議会(International Accounting Standards Board、IASB)が策定する企業会計に関する基準をいい、英語ではInternational Financial Reporting Standards、IFRSと呼ばれる。国際財務報告基準と訳されることもある。

前身は、国際会計基準委員会(International Accounting Standards Committee、IASC)により提案された企業会計に関する基準をいい、英語ではInternational Accounting Standards(IAS)と呼ばれる。このIASCは、1973年に、全世界共通の企業会計ルールを策定することを目標として9ヵ国の会計士団体が組織した委員会であるが、それ以来、企業会計のさまざまなルールについて、順次意見を表明してきた。その意見書の集まりがIASである。そして、EU等はすでにIASを国内会計基準として採用しているほか、アメリカもIASへの導入方針を表明している。日本でも、企業会計審議会が国内の企業会計基準を国際会計基準に合致させる作業を進めているが、2009年度(2010年3月期決算)からは、連結決算書について国内基準とIASとを選択して適用することを認める方針を決定した。

IASは数十の意見書で構成されているが、その原則的な考え方は、

1.会計の重点を連結決算に置くこと(単独決算から連結決算へ)
2.キャッシュフローを重視すること
3.資産や負債を時価ベースで評価すること(時価主義)

などである。また、利益の捉え方等に関しても日本の基準と異なる点が多いなど、基準の移行に伴う作業は単純ではない。

なお、2001年に、IASCは国際会計基準審議会(International Accounting Standards Board、IASB)へと改組され、国際会計基準(IAS)の設定・改正もIASBが担っている。また、IASを含めて、IASBが設定する会計基準は、国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards、IFRSs、IFRS)と総称される。

-- 関連用語 --
キャッシュフロー会計

企業の経営成績をキャッシュ(現金・普通預金・定期預金等)の増減をもとに明らかにするという会計手法のこと。

通常の企業会計では、企業の経営成績は最終的に当期利益によって明らかにされるが、当期利益には売掛金のように現金収入ではない収入が計上されており、また必要経費として減価償却費のように現金支出ではない経費が計上されている。このため、当期利益はキャッシュの増加とは通常一致しないことになる。
これに対してキャッシュフロー会計では、キャッシュの増減が企業活動の種類別に(営業活動・財務活動などの種類別に)表示されるので、企業の経営成績がキャッシュにもとづいて明確に表示されることになる。

欧米では古くからキャッシュフロー会計にもとづく「キャッシュフロー計算書」の作成が企業に義務付けられており、「キャッシュフロー計算書」は、貸借対照表・損益計算書と並ぶ重要な財務諸表のひとつとされてきた。
これに対して従来のわが国では、上場企業の財務会計を規制する証券取引法(財務諸表規則)上は、キャッシュフロー計算書を作成する必要がないものとされていた。
しかしわが国でも1997年から国際会計基準の導入が開始された(「国際会計基準」参照)。この結果、企業会計審議会の意見書により証券取引法が改正され、1999年4月より開始する事業年度からは、上場会社は財務諸表のひとつとしてキャッシュフロー計算書を作成することが法律上義務付けられた。これにより現在では、わが国の上場企業ではキャッシュフロー会計がすでに実施されている。

キャッシュフロー会計では、キャッシュフロー計算書においてキャッシュの増減が原因別に開示されるが、キャッシュを増加させるためには、一般的に売掛金をへらし、買掛金を増やし、商品在庫(会計用語では棚卸資産)を削減することが有効である。また不要不急の有形固定資産(土地・建物・機械設備等)の取得はキャッシュを減少させる要因となる。
そのため、わが国の上場企業ではキャッシュを増加させるため(あるいは減少させないため)に、固定資産を圧縮する方向に動いている。また上場建設会社・上場不動産会社では、商品在庫である販売用土地建物を売却する動きが加速しており、不動産市場における土地・建物の供給を増やす要因の一つとなっている。

減損会計

資産を収益性にもとづいて評価し、その結果認識された損失を当該資産の帳簿価額に反映させる手続きをいう。回収の見込みがない投資額は、損失として処理すべきであるという考え方(時価主義)にもとづく会計上の仕組みである。

資産評価によって把握した損失を処理する会計手法には、資産の帳簿価額自体を減額する方法と、損益計算において当該損失を計上する手法とがある。前者が減損会計であり、後者が時価会計である。減損会計においては評価価額の増加は計上できないが、時価会計では評価益を計上することができるなどの違いがある。資産の性格や会計の目的に応じて適切な手法を選択すべきとされている。

減損会計の対象となる資産は固定資産、および投資資産であるが、金融商品など時価会計を適用すべきとされている資産は除外される。減損会計の手続きは、 1.対象資産の確定、2.グルーピング(一体的に収益を生む複数の資産を単位化する)、3.減損の兆候の認識、4.減損損失の認識(資産から得られるであろう割引前将来キャッシュ・フローと帳簿価額を比較する)、5.減損損失の測定(帳簿価額を回収可能価額まで減額する、回収可能価額は、資産の使用価値、または正味売却価額のいずれか高い金額) という順に進められる。

減損会計は、国際会計基準の一部として欧米で早くから取り入れられていたが、日本でも、2005(平成17)年4月1日以後に開始する事業年度からは全面的に適用されることとなった。

投資不動産

賃貸収益の獲得、または、価格の上昇をを目的として保有する土地・建物をいう。 英語ではInvestment Propertyという。

具体的には、賃貸ビル、賃貸店舗、賃貸マンション、賃貸アパート、遊休地などが「投資不動産」に該当する。また、遊休地を一時的に駐車場として利用している場合には、その駐車場は「投資不動産」に該当する。
一方、通常の事業目的で所有する土地建物(例えば本社ビル、自社で使用する工場、自社で使用する店舗など)は「投資不動産」ではない。また、不動産会社・建設会社が販売目的で所有する土地建物は「投資不動産」から除外される。

国際会計基準では、原則的に決算日における「時価」により毎期評価すること(時価評価)を求めている。この場合には、時価の変動から生じる評価益(または評価損)は、毎期の当期利益に含めて表示されることになる。
また、時価評価を採用しない場合には、決算日における時価を貸借対照表に注記すること(時価情報の注記)を求めている。この場合には、投資不動産は取得原価で評価され、通常の固定資産と同様に、毎期減価償却を行ない減損が発生した場合には減損会計により損失を計上することになる。
なお、ここで「時価」とは「フェア・バリュー(公正価値)」のことで、原則として、取引知識がある者同士の間で成立する資産の取引価額、つまり、不動産市場における市場価格であると考えることができる。

日本では2005年度から減損会計が導入されたが、投資不動産についても減損会計が適用されており、国際会計基準による時価評価または時価情報の注記は求められていない。

販売用不動産の評価減

不動産会社・建設会社が商品在庫として保有する販売用不動産について、その時価が取得価額よりも下落したときに、評価額を減じて決算することをいう。 通常の販売目的で保有する棚卸資産については、取得原価をもって貸借対照表価額とし、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、収益性が低下しているものとみて下落価額を損失計上し、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とすることとされている。販売用不動産についても、同様の考え方を適用し、正味売却価額により評価しなければならない。 評価額は、開発の可能性に応じて次の算式によって算定する。
i)開発の見込みがないとき
販売用不動産の正味売却価額 = 販売見込額ー販売経費等見込額
ii)開発が見込まれるとき
開発事業等支出金の正味売却価額 = 完成後販売見込額ー(造成・建築工事原価今後発生見込額+販売経費等見込額) なお、販売用不動産については、時価が取得価額より50%以上の下落を示したときには強制的に評価を減じる措置(棚卸資産の強制評価減)が定められていたが、2009(平成21)年にこの措置は廃止された。しかし、評価減を損失として処理する考え方に変わりはない。

土地再評価法

金融機関・一定の要件を満たす株式会社・上場会社について、棚卸資産を除く事業用の土地の全部(建物は対象外)を再評価し、その土地評価益(または土地評価損)を貸借対照表に計上することを可能にした法律。正式名称は「土地の再評価に関する法律」。

土地再評価法は、1998(平成10)年3月に議員立法で3年間の時限立法として成立し、2001(平成13)年3月に期限を約1年延長され、2002(平成14)年3月31日まで適用されていた。

この土地再評価法では、金融機関や会社が所有する事業用の土地を「すべて」再評価することが必要とされており、個々の土地の評価損・評価益を合計したものが、貸借対照表に計上される。

その際、全体を合計した評価益(または評価損)は、当期利益には計上されない。従って、仮に多額の評価益が発生したとしても、再評価を行なった年度については評価益にかかる実際の税負担は発生しない。

このように土地再評価法は、主に金融機関や事業会社の資本を貸借対照表上で増強することに狙いがあり、金融機関や業歴の長い上場事業会社・上場不動産会社を中心に、1,000社以上がこの法律にもとづく土地再評価を実施し、資本の増強を実現した。

この法律にもとづき、事業用土地の全体について評価益が発生した場合、貸借対照表では、資産の部では「土地」の価額を増額し、資本の部には「再評価差額金」を計上する。
また、負債の部には「繰延税金負債」が計上される。この「繰延税金負債」とは、事業用土地を将来売却した場合に発生するであろう税負担の見込み額のことであり、将来の土地売却に備えて先取りして計上するものである。

例えば、ある会社の事業用土地全部の過去の取得価額の合計が100億円、再評価した場合の事業用土地全部の評価額が150億円、評価益に対する税率(見込み)が40%であるとすると、次の項目が貸借対照表に新たに計上されることとなる。

資産の部:土地50億円(土地の再評価による評価益)
負債の部:繰延税金負債20億円(50億円×40%)
資本の部:再評価差額金30億円(50億円×60%)

このようにして再評価による評価益のうち30億円が資本に計上され、資本が増強されるのである。

土地再評価法において土地を再評価する場合には、土地の「時価」をどのように算出するかが問題となるが、再評価の方法は政令により各金融機関・会社が次のいずれかのうちから選択できるものとされていた。 1.近隣の地価公示価格に合理的な調整を行なって算定する方法
2.近隣の都道府県基準地価格に合理的な調整を行なって算定する方法
3.固定資産税評価額に合理的な調整を行なって算定する方法
4.路線価(地価税法の時価)に合理的な調整を行なって算定する方法
5.不動産鑑定士等が行なう鑑定評価による方法

なお、土地再評価を行なった金融機関・会社についても、2005年度から減損会計が適用される予定であるので、減損会計により事業用土地の評価額の切下げが必要となった場合には、再評価後の土地価額を基準として評価額の切下げが実施されることとなる(「減損会計」「投資不動産」参照)。

不動産の時価評価

会計において、不動産価格を現在時点で評価することをいう。

従来日本では、会計上、保有する不動産を取得時の価額で計上する方法(取得原価主義による取得簿価会計)が一般的であった。しかし、資産価値の変化を会計に適切に反映できないという弊害があり、また、国際会計基準では、資産を時価で評価して会計に反映させる考え方(時価主義)が標準とされていることから、2000年から販売用不動産について時価での評価が義務付けられるなど、時価評価の適用が拡大されてきた。そして、05年度からは、企業会計原則において、全面的に不動産の時価評価が導入された。

時価評価の方法としては、一般的に、 1.資産から得られるであろう収益を算定する方法(この方法によって算定した価額が帳簿価額を下回る場合に、その損失を帳簿価額に反映する手続きが減損会計である) 2.現時点での取引価格で算定する方法(この方法で算定した結果生じる資産価額減を、損失として計上する手続きが時価会計である) の2つがある。企業が保有する不動産については、原則として1.の方法で評価し、減損会計が適用される。

時価評価を実施することにより、不動産の含み益や含み損が開示されて企業の財務等の透明化が進むとされるが、一方で、企業経営が不動産価格の変動に大きく左右されやすくなるという問題も指摘されている。保有する不動産を証券化などによって会計上切り離して(ノンリコース化)、価格変動のリスクを避けようとする動きがあるのはそのためである。