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最終更新日:2017/11/20

特定持分信託

とくていもちぶんしんたく

 資産流動化法上の特定目的会社に対する特定出資に係る持分(特定持分)を、資産流動化計画に基づく資産の流動化に係る業務が円滑に行われるよう管理することを目的として信託すること。

 不動産の原保有者(オリジネーター)が、特定目的会社を設立する場合、特定持分信託をすることにより、信託財産の管理について原保有者から指図することができなくなるとともに、原保有者が倒産した場合の影響を分離させることができる。

 倒産隔離のための制度として資産流動化法で整備された(資産流動化法33条)。

-- 関連用語 --
資産流動化に関する法律(資産流動化法)

 特定目的会社や特定目的信託を用いて資産を保有し、その資産を担保に有価証券や社債を発行したり、信託の受益権の譲渡等を行うことにより資産の流動化を図ることを目的として平成10年9月に施行された法律。通称として「SPC法」が使われることも多い。

 平成13年9月の改正施行で、対象とされる資産の範囲は、不動産、指名金銭債権(銀行の貸付債権、リース債権、企業の売掛債権)とその信託受益権であったものから、これらを含む財産権一般にまで拡大された(新SPC法ともいう)。

特定目的会社

 資産を取得・保有し、その資産を裏付けにした証券を発行して資金を集めることを目的として設立された法人のこと(資産流動化法16条以下)。不動産の流動化・証券化の核となる組織で、一定の税制上の優遇措置が与えられている。実態の無い器(ビークル)であるため、特定資産の管理・処分の業務は信託会社等に信託しなければならない。ただし、特定資産が不動産である場合は、財産的基礎等を有する者(不動産業者等)に委託することができる(同法200条)。事業終了後には解散する。

特定目的会社の業務は、資産流動化計画に基づいた特定資産の流動化に制限され、原則として他業務を行うことは禁止されている(同法195条)。なお、特定資産は不動産、指名金銭信託、これらの信託受益権に制限されていたが、平成12年の法改正で広く財産権一般に拡大された。

また、特定目的会社のことを一般的にSPC(Specific Purpose Company)ということが多いが、資産流動化法に基づかないで株式会社や有限会社形態による特別目的会社を設立して流動化する方法もあり、これらについてもSPC(特別目的会社:Special Purpose Company)と表記することもある。ただし、特定目的会社については、資産流動化法上の特定目的会社以外に、商号中に特定目的会社の文字を用いてはならないとしている(同法15条)。なお、特定目的会社と特別目的会社を区別するために特定目的会社をTMK(Tokutei Mokuteki Kaisha)と表記することもある。

資産流動化計画

 特定目的会社による資産の流動化に関する基本的な事項を定めた計画のこと(資産流動化法2条4項)。

 資産流動化計画には資産の流動化に関する計画期間、資産対応証券の総口数の最高限度、特定資産の内容・取得の時期及び譲渡人、特定資産の管理及び処分の方法等の事項を記載しなければならない(同法5条)。

 特定目的会社は業務開始前に、資産流動化計画について、あらかじめすべての特定社員(特定出資をした出資者)の承認を受けなければならない(同法6条)。

 資産流動化計画は、特定目的会社が資産の流動化に係る業務を行うときに内閣総理大臣に届け出る際に添付される(同法4条)。また、資産流動化計画を変更するには、社員総会の決議によらなければならない(同法151条)。

倒産隔離

 不動産の証券化において、オリジネーター(原資産保有者)が倒産した場合に、資産の譲受人となるビークル(証券化対象の資産を保有するSPC等)がその資産に関する権利の行使をオリジネーターの債権者や管財人から妨げられないようにすること。英語ではBankruptcy Remote(バンクラプシー・リモート)という。

 英国領ケイマン諸島等で設立されたSPC(ケイマンSPC)と英米法特有の制度である慈善信託(チャリタブルトラスト)及び信託宣言を組み合わせ、慈善信託が形式上の株主となったケイマンSPCが日本国内にSPC(国内SPC)を設立し、その国内SPCが証券化対象資産を保有することによって、オリジネーターとの関係を遮断する方法などがある。近時は、有限責任中間法人が用いられるケースも多い。

特定出資

 特定目的会社の資本に対する出資のうち、特定目的会社を設立する発起人が設立の際に振込みを行う出資のこと(資産流動化法2条)。

 出資者は出資の金額を限度とする有限責任を負う(同法27条)。特定出資を行ったもの(特定社員)は、特定持分の全部又は一部を他の特定社員に譲渡することができるが、それ以外の者に譲渡する場合には、あらかじめ社員総会の承認を受けなければならない(同法29条)。特定出資の持分(特定持分)は、株式会社の株式に相当する。