このページを印刷する

最終更新日:2017/11/20

真正売買(不動産流動化の)

しんせいばいばい(ふどうさんりゅうどうかの)

 不動産流動化において、不動産又はその信託受益権を、オリジネーター(原保有者)からビークル(資産を保有するための事業体・器)に譲渡する際、その譲渡が法的かつ会計上の有効な売買として取り扱われ、単なる譲渡担保等の金融取引とみなされないこと。

 形式的に不動産売買の形態をとっていても、関係者の意図が担保物権の成立にあったとすると、オリジネーターが倒産した場合には差押債権者・破産管財人等が担保権を主張して売買を否認される可能性がある。また、会計上、有効な売買として認められない場合は、オリジネーターのバランスシートから切り離すことができなくなる。

 このように不動産流動化では真正売買性を確保することが極めて重要な意味を持つが、その判断基準はおおむね次の3点といわれている。(1)当事者の真に売買するという意思(買戻特約等がない、支配権の移転、経済的利益及びリスクの移転、会計上のオフバランスなど)、(2)適切な価額の支払、(3)第三者対抗要件の具備(所有権移転登記)。
 会計上のオフバランス処理に関しては、平成12年7月に日本公認会計士協会が「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針について」を公表し、5%ルールと呼ばれる真正売買に関する基準等を規定した。

-- 関連用語 --
オリジネーター(Originator)

不動産証券化において、保有する不動産、不動産の信託受益権、不動産収益を裏付けとした貸出債権等を、SPC等の証券化を行う発行主体(ビークル)に譲渡する者のこと。原資産保有者、資産譲渡人ともいう。不動産以外の資産(金銭の貸出債権等)を原資産とするケースもある。

オリジネーターは自らが保有している不動産・債権を譲渡して資金調達を行う資金調達者でもある。

ビークル(Vehicle)

 英語では「乗り物」や「媒体」といった意味で、不動産等の資産の証券化に関して使われる場合は、証券発行主体となる器のことを指す。SPV(Special(Specific) Purpose Vehicle)と表記されることもある。SPC等の会社形態や商法上の匿名組合、民法上の任意組合などの組合形態、あるいは特定目的信託等がある。

 ビークルを介して証券化対象資産と投資家が結び付けられ、投資家は証券化対象資産から得られるキャッシュフロー等を得ることができる。

 オリジネーター(原資産保有者)が倒産した場合でも、その影響を受けない倒産隔離の仕組みを組成するためにビークルは利用される。

オフバランス

 財務体質を改善するために、保有していた資産を譲渡等することによって、バランスシート(貸借対照表)から外すこと。不動産等の資産をバランスシートから外すことで、財務指標の一つであるROA(資産収益率)の改善が図れ、過剰に資産(不動産)を抱えこんだバランスシートの調整や資産の圧縮をすることができる。

 オフバランスのために不動産の証券化手法を用いた場合、原資産の保有者であるオリジネーターが当該証券化商品を自ら取得してエクイティ投資家となるケースが多くあり、会計上オフバランスされているかどうかが論点になっていた。このため日本公認会計士協会は平成12年に、オリジネーターのリスク負担割合が不動産評価額の概ね5%程度の範囲内であればオフバランスされたとみなすとする実務指針を示した。

5%ルール(不動産の流動化の)

 不動産の流動化で不動産の譲渡人がオフバランス(自身のバランスシートから切り離す)する際の会計上のルールのこと。不動産に係るリスクと経済価値の移転に関する判断基準として、リスク負担割合(流動化する不動産の譲渡時の適正な価格(時価)に対する譲渡人のリスク負担の金額の割合)がおおむね5%の範囲内であれば、リスクと経済価値のほとんどすべてが他の者に移転しているとみなされ、その譲渡は真正売買として会計処理ができるというもの。譲渡人にリスクが5%以上残っている場合は、真正売買とは認められず、不動産を担保に資金調達したとみなされ、金融取引としての会計処理を求められる。

 平成12年7月に日本公認会計士協会から公表された「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」で、譲渡人の会計処理の判断基準として統一化された。