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最終更新日:2025/6/4

使用貸借

しようたいしゃく

動産不動産を有償で貸し付ける契約が「賃貸借契約」であるが、無償で貸し付ける契約は「使用貸借契約」と呼ばれる

身の回りの洋服や道具、家具や自動車などについて、家族や親戚、友人間において無償で物を貸し借りすることは日常生活でよく見られるところであり、契約書が存在せず、口約束で行なわれる場合も多い。不動産においても、親戚に短期間無償で家を貸したり、経営者が、個人名義の土地の上に会社名義の建物建築するケースや、親名義の土地の上に子名義の建物を建築するケースなどがあるが、無償であるところから借地借家法が適用されず、民法が適用される。

2020年4月施行の改正民法施行以前は、上述の事情から、書面によらない要物契約を想定し、貸主はいつでも借主に対して契約を解除し、物の返還を要求することができることが原則とされていた(ただし、存続期間を定めているときはその期間が満了するまで、使用および収益の目的を定めたときは借主がその目的に従い使用および収益を終えるまでは物の返還を要求できない。/旧民法第597条・598条)。しかし、時代の変化により、経済的取引の一環として行われるケースが増加し、その法的安定を図る必要性が高まったことから、改正民法においては諾成契約が原則となり、解釈によっていた部分の明文化が図られた。

具体的には、まず貸主が「物を引き渡すことを約し」、借主が「返還をすることを約する」ことによって契約が成立する(新民法第593条)として諾成契約であることを明文化し、引き渡し前の貸主の解除権(書面による場合を除く。/同第593条の2)、使用収益の終了等による契約の終了(同第597条)、相当期間経過の場合の貸主の解除権等(598条)、返還時の収去義務および原状回復義務(599条)、損害賠償請求権についての時効完成の猶予(600条)等について、諾成契約を原則とし、これまで解釈で対応していた点について条文の整理、明確化が図られた。

-- 本文のリンク用語の解説 --

動産

動産とは「不動産以外の物」のことである(民法第86条第2項)。
そして不動産とは「土地及びその定着物」とされているので、動産とは「土地及びその定着物ではない物」ということができる。
特に重要なのは、不動産に付属させられている動産(例えば家屋に取り付けられているエアコンなど)である。このような動産は「従物(じゅうぶつ)」に該当し、不動産実務でよく問題となる(詳しくは従物、付加一体物へ)。

借地借家法

借地権および建物の賃貸借契約などに関して特別の定めをする法律で、民法の特別法である。1991年公布、92年8月1日から施行されている。

従前の借地法、借家法を統合したほか、定期借地権等の規定が創設された。借地借家法では、借地権の存続期間や効力等、建物の賃貸借契約の更新や効力等について、借地権者や建物の賃借人に不利にならないよう一定の制限が定められている。

要物契約

当事者の合意のほか、物の引き渡しなどの給付があって初めて成立する契約。 民法改正(債権法関係、2020年4月施行)までは、消費貸借、使用貸借、寄託の契約が要物契約として規定されていた。しかしながら、近代民法は当事者の合意のみによる契約成立(諾成契約)を基本原則としていること、要物性を厳格に適用すると不都合な場合があることなどから、判例は、これらの要物契約の成立について要物性を緩和して解釈している。 そこで、民法改正(債権法関係)によって、消費貸借(書面によるもの)、使用貸借、寄託の契約は諾成契約に改められ、現在は、消費貸借契約のうち書面によらないもののみが要物契約とされている。

諾成契約

当事者の合意の意思表示のみで成立する契約。 民法は、基本原則として、契約は締結の申込みに対して相手方が承諾したときに成立する旨を規定し、売買契約、賃貸借契約などほとんど全ての契約について諾成契約としている。 また、契約の成立には、法令による特別の定めがない限り書面の作成などの方式を備える必要はなく、任意の意思表示で足りる。  

時効

ある事実状態が一定期間継続した場合に、そのことを尊重して、その事実状態に即した法律関係を確定するという制度を「時効」という。 時効は「取得時効」と「消滅時効」に分かれる。取得時効は所有権、賃借権その他の権利を取得する制度であり、消滅時効は債権、用益物権、担保物権が消滅するという制度である。

時効は時間の経過により完成するものであるが、当事者が時効の完成により利益を受ける旨を主張すること(これを援用という)によって初めて、時効の効果が発生する。

また、時効の利益(時効の完成によって当事者が受ける利益)は、時効が完成した後で放棄することができる。これを時効利益の放棄という。

また時効は、時効の完成によって不利益を受ける者が一定の行為を行なうことにより、時効の完成を妨げることができる。これを時効の更新という。