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最終更新日:2025/10/7

強制競売

きょうせいけいばい

債務の返済が滞り、債権者が支払いの督促や催告をしているにも関わらず債務者が義務を履行しない場合に、裁判所を通じて強制的な手段で債務者所有の資産を入札により売却し、債権の回収を図る手続き。

強制競売を行なうためには、まず、債権者は1)支払い命令の確定判決、2)裁判上の和解、3)調停、4)強制執行認諾文言付き公正証書、5)仮執行宣言付きの判決により、債務名義の獲得が必要である。その上で必要書類をそろえて強制競売の申立てを行なう。

裁判所は、申立書を審査した後、強制競売の開始を決定すると、対象となる資産の差押え登記、現況調査、評価を行ない、入札を公告する。落札者が代金を納付することで売却が確定し、法律上の優先順位に従って債権者へ配当が行なわれる。

債権者が債務者所有の不動産に対してすでに抵当権を有している場合には、その抵当権を実行した方が回収に有利であるため(担保不動産競売)、強制競売の手続きは利用されない。購入側への情報の提供が限定的であり、価格交渉の余地もほとんどないため、売却価格も低めとなる上、他の債権者との競合もあり、債務全額が回収されるとは限らず、そのため債務者側でも残債が残るというデメリットが生じ得る。債権者にとっても債務者にとっても経済的には必ずしも有利な方法ではないが、何らかの理由により不動産の任意売却等による債務の整理等ができない場合に、裁判所の強制力をもって債権回収の実現を図る手段である。

-- 本文のリンク用語の解説 --

債務

私法上の概念で、ある人(債権者)に対して一定の給付をなすべき義務をいう。

債務を負っているのが債務者である。

債権

私法上の概念で、ある人(債権者)が、別のある人(債務者)に対して一定の給付を請求し、それを受領・保持することができる権利をいう。

財産権の一つであり、物権とともにその主要部分を構成する。

競売

債権者が裁判所を通じて、債務者の財産(不動産)を競りにかけて、最高価格の申出人に対して売却し、その売却代金によって債務の弁済を受けるという制度のこと。

差押の登記

不動産に対する差押が行なわれた際に、不動産登記簿に記載される登記のこと。
競売または公売の手続きが正式に開始されたことを公示する登記である。

差押の登記に書かれる「原因」には、次の3種類の文言がある。 1.抵当権等を実行するための任意競売が開始されたとき
→原因「競売開始決定」 2.裁判所の判決等に基づく強制競売が開始されたとき
→原因「強制競売開始決定」 3.税金の滞納に基づく公売が行なわれるとき
→原因「税務署差押」

不動産

不動産とは「土地及びその定着物」のことである(民法第86条第1項)。
定着物とは、土地の上に定着した物であり、具体的には、建物、樹木、移動困難な庭石などである。また土砂は土地そのものである。

抵当権

債権を保全するために、債務者(または物上保証人)が、その所有する不動産に設定する担保権のこと。債務者(または物上保証人)がその不動産の使用収益を継続できる点が不動産質と異なっている。 債権が弁済されない場合には、債権者は抵当権に基づいて、担保である不動産を競売に付して、その競売の代金を自己の債権の弁済にあてることができる。

残債

債務を分割で返済する場合の、まだ返済していない部分またはその金額。住宅ローンの場合には、月々決まった額の返済を続けていることが多いが、その未返済分。 住宅ローンは、月々の返済が困難となり、滞納した場合には、契約が解除され一括返済が求められる契約になっていることが多いが、そうした場合や金利情勢を見て一括繰り上げ返済をする場合には、残債額が返済額となる。買い換えの場合など、ローン返済中の住宅を売却して、残債を返済する場合には、売却不動産の価値と残債額の比較が重要である。 残債の計算は、返済月額、金利、返済回数から計算されるが、その他に一括償還に伴い手数料が発生する場合などがあり、金融機関との調整が必要である。
-- 関連用語 --
債権差押

債務者が有する金銭債権から、債権者が満足を得る手続きのこと。債務者の財産に対する強制執行の一つである。

債権差押では、債務者が保有する金銭債権が対象になる。例えば、債務者が銀行に預けている預金(預金債権)、債務者が取引先に請求できる売掛金(売掛金債権)、債務者が勤務先に請求できる給与(給与債権)など、いろいろな金銭債権が差押え可能である。

債権を実際に差し押さえる手続きは次のとおりである。 仮に、債務者Aが債権者Bから金銭を借りており、債権者Bが債務者AのC銀行の預金口座を差し押さえると想定する。債権者Bは、まず債務者Aの住所地を管轄する地方裁判所に、債権差押命令の申立てを行なう。これを受けた裁判所では、債務者Aが預金債権を有している相手方であるC銀行(これを「第三債務者」と表現する)に対して、債権差押命令を郵送する。

この命令が送達されてから1週間が経過すると、債権者Bは、C銀行に対して預金を自己(B)に支払うように請求することが可能となる。このようにして債権者Bは満足を得ることができる。
なお、債権差押に類似した手続きとして「転付命令(てんぷめいれい)」がある。