最終更新日:2025/8/19
UA値(外皮平均熱貫流率)
ゆーえーち断熱性能および冷暖房の効率性を表す指標として、外皮(外壁、屋根、窓等)の熱損失量の合計(外皮熱損失量)を、外皮全体の面積の合計で除したもの。換気による熱損失は考慮しない。「外皮1平方メートルあたりの、外へ逃げる熱の平均値」などと説明される。
単位は「W/平方メートル・K」で表され、室内と外の温度差が1度ある場合(Kの意味)の、1平方メートル当たりの損失熱量(W)のこと。断熱性能が高いほど、UA値は低くなる。
住宅性能表示制度においては、地域ごとにUA値に対応して、該当する断熱等性能等級が定められており、例えば東京ではUA値0.87が、北海道では0.46が等級4に該当すると定められている。
2022(令和4)年のいわゆる「建築物省エネ法改正」により題名も改められた「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律」の公布・施行により、25(令和7)年4月からは、省エネ基準適合が義務化され、新築住宅については、断熱等級4が最低基準として必要となった。
さらに30年には現在の断熱等級5相当(東京0.60、北海道0.40)が義務化される方向であり、これはZEH基準に相当する。その上に断熱等級6(東京0.46、北海道0.28)、断熱等級7(東京0.26、北海道0.20)が定められていて、これらは一次エネルギー消費量をそれぞれ30%、40%削減し、HEAT20によるG2、G3と同レベルに相当する。
一戸建て住宅については等級7(地域によっては等級6)、共同住宅等にあっては等級5の場合には、UA値およびηAC値(冷房期の平均日射熱取得率)を明示することができる。
屋根
窓
住宅性能表示制度
品確法では、住宅の性能が正しく表示されるように次のような仕組みを設けている。
1.評価する機関を大臣が指定する。
品確法にもとづき正式に住宅性能を評価することができる機関は、登録住宅性能評価機関だけに限定されている(品確法第5条第1項)。登録住宅性能機関とは、住宅性能評価を行なうことができる機材や能力等を持つものとして国土交通大臣により登録を受けた会社等のことである。
2.評価書の作成方法を大臣が定める
登録住宅性能評価機関は、依頼者の依頼を受けて、住宅の性能を評価した結果を表示する書面(住宅性能評価書)を作成する。
この住宅性能評価書を作成するにあたっては、登録住宅性能評価機関は、国土交通大臣が定めた基準(日本住宅性能表示基準)に準拠しなければならない。
このように国が関与することにより、住宅の性能が適切に表示される仕組みが設けられている。
なお、品確法では、住宅性能評価書が交付された新築住宅については、住宅性能評価書に記載された住宅の性能が、そのまま請負契約や売買契約の契約内容になる場合があると規定している。この規定により注文者保護・買主保護が図られている(詳しくは「住宅性能評価書と請負契約・売買契約の関係」へ)。
また建設住宅性能評価書が交付された住宅については、指定住宅紛争処理機関に対して、紛争処理を申請することができるとされている(品確法第67条)。
断熱等性能等級
等級6:著しい削減
等級5:より大きな削減
等級4:大きな削減(建築物エネルギー消費性能基準を定める省令(平成28年経済産業省・国土交通省令第1号)に定める基準相当程度)
等級3:一定程度の削減
等級2:小さな削減
等級1:その他 の7等級により評価するよう定められている。 また、既存住宅の性能表示の場合においては、断熱等の性能に大きく影響すると見込まれる劣化事象が認められないこと等を確認することとされている。 UA値および「冷房期の平均日射熱取得率(数値が小さいほど日射熱を取得しにくく、暑さを軽減)」については、最上位等級の場合のみ、数値を明示することができるとされる。 北海道等から沖縄等までの8地域に区分され、建設地の気候条件に合わせた評価を可能としている。
建築物省エネ法
同法に規定されている主な措置は、次の通りである。
1 建築主に対する規制措置
(1)一定規模以上の非住宅建築物について、その新築時等に、省エネ基準(一次エネルギー消費量に関する基準)に適合していることを義務づける。
(2)一定規模以上の建築物について、その新増改築などを為す場合に、エネルギー消費性能の確保のための構造および設備に関する計画を届け出ることを義務づける。また、その計画が省エネ基準に適合しない場合には、必要に応じて、省エネ性能の向上のための措置を指示・命令することができることとする。
(3)住宅事業建築主が供給する建売戸建住宅に関する省エネ性能の向上のための基準(住宅トップランナー基準)を定め、一定数以上の住宅を新築する事業主に対して、必要に応じて、省エネ性能の向上を勧告することができることとする。法改正により、分譲型住宅のトップランナー制度の対象を、分譲マンションにも拡大することとなった。
2 省エネ性能向上計画の認定
建物の新築および省エネ性能向上のための改修等に当たって、省エネ性能向上計画を作成し、誘導基準に適合するなどの認定を受ける制度を定める。また、認定を受けた場合には、容積率の特例を適用することとする。
3 エネルギー消費性能の表示
建築物の所有者が、その所有する建築物について省エネ基準に適合する旨の認定を受け、エネルギー消費性能を表示する制度を定める。法改正により、2024年より販売・賃貸の広告に省エネ性能を表示する制度がスタートすることになった。
4 建築物エネルギー消費性能判定機関等の登録
建築物の省エネ基準等への適合を判定する業務を実施する機関または建築物のエネルギー消費性能を評価する業務を実施する機関が、それぞれ、国土交通大臣の登録を受ける制度を定める。登録を受けた機関は、それぞれ、「登録建築物エネルギー消費性能評価判定機関」または「登録建築物エネルギー消費性能評価機関」として、建築物省エネ法に基づく判定または評価の業務を実施できることとする。
省エネ基準
省エネ基準は、(A)一次エネルギー消費量に関する基準、(B)外皮熱性能に関する基準の二つから構成されている。
(A)一次エネルギー消費量に関する基準
すべての建物についての基準で、一定の条件のもとで算出した、空調、照明、換気、給湯等の諸設備のエネルギー消費量および太陽光発電設備等によるエネルギーの創出量
(B)外皮熱性能に関する基準
住宅についての基準で、一定の条件のもとで算出した、外壁や窓の外皮平均熱貫流率(単位外皮面積・単位温度当たりの熱損失量)および冷房期の平均日射熱取得率(単位外皮面積当たりの単位日射強度に対する日射熱取得量の割合)であって、地域の区分に応じて定める
(注:非住宅建築物についても外皮熱性能に関する基準が定められているが、これは、建築物省エネ法上の「建築物エネルギー消費性能基準(省エネ基準)」とはされていない。)
省エネ基準は、建築物省エネ法による次のような規制、指導、表示などにおいて、その判定、指示、認定等の基準となっている。
(1)適合義務
すべての住宅・非住宅建築物は、新築時等に、一次エネルギー消費量に関する省エネ基準に適合しなければならず、基準不適合の場合には、建築確認を受けることができない。
(2)エネルギー消費性能の表示
建築物の所有者は、その建築物が省エネ基準に適合することの認定を受け、その旨を表示する。
なお、建築物のエネルギー消費性能に関する基準には、省エネ基準のほか、次のものがある。
ア)住宅トップランナー基準
住宅事業建築主に対して、その供給する建売戸建住宅・分譲マンション・賃貸アパートの省エネ性能を誘導する際に適用する基準
イ)誘導基準
省エネ性能向上計画の認定を受けて容積率の特例を受ける際の基準
ZEH
ZEHは、住宅の高断熱化、設備(空調、換気、照明、給湯等)の高効率化、エネルギーの創出(太陽光発電等)によって実現できると考えられている。正味で75%省エネを達成したものをNearly ZEH、 正味で100%省エネを達成したものをZEHと称する。
なお、ZEHに類似した住宅としてゼロエミッション住宅があるが、ZEHはエネルギー消費の削減(省エネルギー)に特化した目標を定めているのに対して、ゼロエミッション住宅は総合的な環境負荷の削減を目標としている。
一次エネルギー消費量
非住宅建築物については、空気調和設備、空調設備以外の機械換気設備、照明設備、給湯設備、エレベーター、その他の一次エネルギー消費量を合計し、エネルギー利用の効率化設備によるエネルギー消費削減量を減じた消費量を算定する。
住宅については、暖房設備、冷房設備、機械換気設備、照明設備、給湯設備、その他の一次エネルギー消費量を合計し、エネルギー利用の効率化設備によるエネルギー消費削減量を減じた消費量を算定する。
その具体的な算定方法は、国土交通大臣が定めることとされているが、いずれも、一年当たりのエネルギー量(メガジュール/年)で表される。
省エネの程度を評価する場合の一次エネルギー消費量は、省エネ基準を1とすれば、誘導基準は、非住宅建築物については0.8倍、住宅については0.9倍、住宅トップランナー基準は0.85倍(建売戸建住宅)の水準に設定されている。
建築物のエネルギー消費性能を評価するときの評価指標のひとつで、室内外の温度差による熱損失量をいう。この数値が小さいほど省エネの程度は大きい。
非住宅建築物については、屋内周囲空間(外気に接する壁から5m以内の屋内空間、屋根直下階の屋内空間および外気に接する床直上の屋内空間、「ペリメータゾーン」という)の単位ペリメータゾーン床面積当たり年間熱負荷(単位は、メガジュール/平方メートル・年、「PAL*」という)を算定する。これを基準として用いる場合には、用途および地域区分に応じて基準とする数値を調整する。
住宅については、外壁や窓の外皮平均熱貫流率(外皮面積・単位温度当たりの熱損失量で、単位は、ワット/平方メートル・度、「UA値」という)および冷房期(一日の最高気温が32度以上となる期間)の平均日射熱取得率(単位外皮面積当たりの日射量に対する日射熱取得量の割合で、「ηA値」という)を算定する。これを基準として用いる場合には、地域の区分に応じて基準とする数値を調整する。
その具体的な算定方法は、国土交通大臣が定めるとされている。
なお、エネルギー消費性能の基準として外皮熱性能が用いられるのは、(1)住宅に関する省エネ基準、および、(2)全ての建物に関する誘導基準においてである。
建築物の気密性を表す指標。建築物内の隙間の面積の合計(平方センチメートル)を建築物の延床面積(平方メートル)で除したもので、「相当隙間面積」という。 隙間の面積は、特殊な機械を用いて、建築物の内外の気圧に差を生じさせ、そのときに計測された風量を基に求める。 1999(平成11)年の「次世代住宅省エネルギー基準」の採用により、「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)」に基づく「住宅に係る省エネルギーの使用の合理化に関する建築主及び特定建築物の所有者の判断基準」(以下、「基準」「指針」はいずれも建設省(当時)・国土交通省・経済産業省等関係省庁告示等)において、地域の区分に応じ、北海道等寒冷地においてはC値2.0(平方センチメートル/平方メートル)、東京等それ以外の地域では5.0(平方センチメートル/平方メートル)が定められ、それに適合するための施工方法等については、「住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関する設計、施工及び維持管理の指針」に詳細に定められた。また、2000(平成12)年に住宅性能表示制度が開始されたことに伴って制定された「日本住宅性能表示基準」に基づく「評価方法基準」にも、同様に寒冷地においてC値2.0(平方センチメートル/平方メートル)等が「等級4」に相当するものとして採用された。 しかし、その後の施工技術等の向上、建材・工法等の変化に加え、評価の蓄積から多様な方法による気密性の確保が可能であることが明らかになってきたことなどから、気密性についての定量的基準を除外することとなり、09(平成21)年の上記告示改正において、C値が削除された。さらに、15(平成27)年の「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)」の制定および21(令和3)年の同法改正を経て、25年4月以降、断熱性能の表示の基準として、UA値(外皮平均熱貫流率)およびηAC値(冷房期の平均日射熱取得率)が採用されることとなり、現在は、基準値としてのC値は示されていない。 ただし、住宅の気密性については依然として、重視する立場があり、「HEAT20」においても、(一社)環境共生まちづくり協会が国土交通省住宅局の編集協力を得て作成した「省エネ性能に優れた断熱性の高い住宅の設計ガイド」には、「断熱と気密はセットで考えることが必要」との認識が示され、C値の水準や測定方法についての記述がある。