最終更新日:2025/6/17
施工監理
せこうかんり法律用語としては、建築基準法および建築士法に基づき、建築士が、発注者の代理人の立場で、設計図どおりに建築工事が行なわれているかどうかを確認することを「工事監理」という。一方、建設業法に基づき、建設業者が請け負った建設工事において、工事現場における施工の技術上の管理(これを「施工管理」と呼ぶことが多い)を行なわせるため置かなければならないとされているのが、監理技術者ないし主任技術者である。
表題の「施工監理」は、この「工事監理」と「施工管理」をまとめて、場合によっては、誤用、混同して用いられていることが多い用語で、使用に当たっても読解に当たっても注意が必要である。
一方、後述するように、公的発注者またはその受託者や代理人的立場の者による発注者側の監理または技術的管理業務や、海外などでコンサルタントがプロジェクト全体や現場の施工を一貫して統括管理(監理)したり、部分的に関与する業務を「施工監理(または施工管理)」と表現している例も見られる。
通常「監理」(建築主、施主、発注者の立場で、設計図通りに施工が行なわれているのかをチェックする業務。設計を請け負った建築事務所等が、設計業務と一体として受託等する場合が多い。)を「さらかん」、「管理」(工事の請負者、建設業者、工事受注者の立場で工事の工程、資材の発注のほか全般を現場でコントロールする業務)を「くだかん」「たけかん」と言っている。施工「監」理の場合は、「さらかん」として、発注者側の工事監理を意味している場合が多い。建築基準法により技術者が工事監理を行なう場合には、現場の施工を厳しく監査するとともに、施主に対して責任をもって適正な施工を約するという意味になる。
施工「管」理すなわち「くだかん」「たけかん」の場合は、工事を請け負った側の建設業者が施工計画の作成、工程管理、品質管理、資材調達や技術上の問題点の改善のために現場作業員を指示するなどの行為を通じて適正な施工を確保する業務を指す。建設業法は、下請を含む直接施工する建設業者の従業員で、この業務を行なう者として「主任技術者」の設置を義務付けている。ただし、下請業者への発注を伴う等の一定規模以上の元請工事についてこの業務を行なう者については、下請の技術者を統括するという意味を含めて「監理技術者」とし、同様にその設置を義務付けている。すなわち、元請ゼネコンは、受注者・施工者として「管理」を行ないつつ、下請に対しては発注者として「監理」をしているという構図がある。このように「施工管理」を行なう技術者を統括する者を「監理技術者」と呼び、その業務も、建設業法上の「施工管理」の一環であることから、「施工管理」の一部を行なうものを「監理技術者」と呼んでいる関係上、そもそも「監理」と「管理」の用語が混乱しやすい素地がある。また、公共建築物の発注者である国土交通大臣官房官庁営繕部は、受注業者向けに「施工管理・工事監理に関する留意事項集」等を作成しており、これらは、元請が行なうのが「監理」であり、下請または直接受注の施工業者が行なうのは「施工管理」となるという実態に依拠した用語であろうと思われる。
さらに、国や地方公共団体、UR等の公共事業に関わる独立行政法人、高速道路会社等が発注者である場合には、発注者側の専門的な技術的知見等を反映しようとする意向が強く働く結果、発注者において工事監理・施工管理的な業務を行なう場合もあり、その場合には、自ら工事全体を管理し、また監理もするという意味で、「施工監理」という用語を用いている場合もある。
公共事業や独立行政法人が地方公共団体から受託して行なう事業の場合は、国民や納税者、委託者である地方公共団体に対して、その工事を含む事業またはプロジェクト全体の遂行に関する統一的な責任を負うため、工事を請け負った建設会社に対して発注者の立場で監理をしながら、委託者等に対しては、管理責任を有するという意味合いから、施工監理ないし施工管理という表現が用いられていることがある。
現実に、ゼネコンによる総額請負方式が多い日本に比べ、海外では、発注者が事業遂行を全面的に委託するコンサルタント業務が広く行なわれており、例えば(独)国際協力機構の「コンサルタント契約書標準約款」では、コンサルタントの業務の一つとして「施工監理計画書の作成」が規定されており、同法人のWEBサイトにおいては、「コンサルタント(施工監理者)は、発注者(施主)の代理人として、施工業者が契約書、技術仕様書・設計図、及びこれらに記載された出来形管理基準、品質管理基準に基づいた施工を行っているかを監理する役割を担っています」との記述がある。
工事発注者から委託を受けた建築士や設計事務者が行なうのが工事監理(建築基準法・建築士法)であり、受注者であり請負者である建設業者側でマネジメントを行なうのが施工管理(建設業法)である一方、発注者側による「施工監理」という用語がなされることも実際には見られるということであるが、いずれにしても、「工事監理」ないし「施工管理」のいずれかの誤用(場合によっては単なる漢字変換ミス)の場合も決して少なくなく、その上口頭で伝達される場合も多いので、注意が必要である。
建築基準法
遵守すべき基準として、個々の建築物の構造基準(単体規定、具体的な技術基準は政省令等で詳細に定められている)と、都市計画とリンクしながら、都市計画区域内の建物用途、建ぺい率、容積率、建物の高さなどを規制する基準(集団規定)とが定められている。また、これらの基準を適用しその遵守を確保するため、建築主事等が建築計画の法令適合性を確認する仕組み(建築確認)や違反建築物等を取り締まるための制度などが規定されている。
その法律的な性格の特徴は、警察的な機能を担うことであり、建築基準法による規制を「建築警察」ということがある。
建築士
建築士は、一級建築士、二級建築士、木造建築士に区分され、業務を行なうことのできる建築物に違いがある。また、一級建築士であって、構造設計または設備設計について高度な専門能力を有すると認められた者は、構造設計一級建築士または設備設計一級建築士としてその専門業務に従事することができるとされている。
建築士は、その業務の執行に当たって、業務を誠実に行ない建築物の質の向上に努めること、設計を行なう場合には法令または条例の定める建築物に関する基準に適合するようにしなければならないこと、工事監理を行なう場合には工事が設計図書どおりに実施されていないと認めるときは直ちに工事施工者に注意を与えなければならないことなどの義務を負っている。
なお、建築士の業務分野は、その専門性に応じて、意匠設計(主として、建築のデザインや設計の総合性の確保を担う)、構造設計(主として、建築物の構造の安全性確保などを担う)、監理業務(主として、工事が設計に適合して実施されるための監督などを担う)に大きく分かれているとされている。
建築士
建設業法
この法律には、建設業を営むうえで守らなければならない諸規定が定められており、それによって、建設工事の適正な施工の確保、発注者の保護、建設業の健全な発達の促進を図ることとされている。
建設業法に規定されている主な制度としては、 1.建設業の営業許可制度
2.建設工事の請負契約に関する、契約内容の義務化、一括下請負の禁止等
3.主任技術者および監理技術者の設置等による施行技術の確保
4.建設業者の経営に関する事項の審査 などがある。