荷重
かじゅう
建築基準法施行令第83条第1項では、「建築物に作用する荷重及び外力」として、1)固定荷重、2)積載荷重、3)積雪荷重、4)風圧力、5)地震力を上げ、さらに同条第2項では、「建築物の実況に応じて」採用しなければならない外力として、土圧、水圧、震動および衝撃を挙げている。
固定荷重とは、建物の構造部材や仕上げ部材の重さの合計であり、建物(建築物や構造物)そのものの重さと考えることができる。
また、積載荷重とは、床や屋根に乗る可動物の重さであり、積雪荷重とは文字通り積雪の重さである。
荷重と言うときには、重さによる、主に鉛直方向の外力(この場合は自重も含む)を指し、建築基準法も上記3つを想定している可能性が高いが、その他の外力について「水平荷重」という表現をする場合や、下からの風圧力を「吹き上げ荷重」と表現する場合もあり、「荷重」と「外力」の区別や包含関係は、論者によって違いがあるなど、必ずしも明確ではない。
建築基準法
国民の生命・健康・財産の保護のため、建築物の敷地・設備・構造・用途についてその最低の基準を定めた法律。市街地建築物法(1919(大正8)年制定)に代わって1950(昭和25)年に制定され、建築に関する一般法であるとともに、都市計画法と連係して都市計画の基本を定める役割を担う。
遵守すべき基準として、個々の建築物の構造基準(単体規定、具体的な技術基準は政省令等で詳細に定められている)と、都市計画とリンクしながら、都市計画区域内の建物用途、建ぺい率、容積率、建物の高さなどを規制する基準(集団規定)とが定められている。また、これらの基準を適用しその遵守を確保するため、建築主事等が建築計画の法令適合性を確認する仕組み(建築確認)や違反建築物等を取り締まるための制度などが規定されている。
その法律的な性格の特徴は、警察的な機能を担うことであり、建築基準法による規制を「建築警察」ということがある。
建築物
建築基準法では「建築物」という言葉を次のように定義している(建築基準法第2条第1号)。
これによれば建築物とは、およそ次のようなものである。
1.屋根と柱または壁を有するもの
2.上記に付属する門や塀
3.以上のものに設けられる建築設備
上記1.は、「屋根+柱」「屋根+壁」「屋根+壁+柱」のどれでも建築物になるという意味である。
なお、地下街に設ける店舗、高架下に設ける店舗も「建築物」に含まれる。
外力
建築物や構造物の躯体の外部からかかる力。
具体的には地震動、風圧、積雪による荷重など。
建築基準法施行令第83条第1項では、「建築物に作用する荷重及び外力」として、「固定荷重」「積載荷重」「積雪荷重」「風圧力」「地震力」を掲げ、さらに同条第2項で「建築物の実況に応じて、土圧、水圧、震動及び衝撃による外力を採用しなければならない」としている。荷重と外力については、ほぼ同じものであると認識されていると考えられるが、例えば、建築物自体やその部分の重量に起因すると見られる固定荷重や積載荷重については、「外力」というよりは「荷重」の方がふさわしいと考えられる。一方、建築物を構成する各材料の立場からは、外力=荷重としてほぼ同一視される。
積雪荷重
積雪により建築物に加わる荷重であり、鉛直方向の外力として作用する。
建築基準法施行令第82条の保有水平耐力計算及び同令第82条の5の限界耐力計算に当たって、積雪による荷重を考慮しなければならないとされている。
積雪荷重は、特定行政庁が地域ごとに規則で定めることとされており、国土交通大臣の定める基準(平12建告第1455号「多雪区域を指定する基準及び垂直積雪量を定める基準を定める件」)に従って多雪区域とそれ以外の区域ごとに、多雪区域においては、積雪1cmにつき3kg/平方メートル、それ以外の一般の区域においては1cmにつき2kg/平方メートルを単位積雪荷重として、地域の特性に応じて垂直積雪量を定めることにより、考慮すべき積雪荷重が決定される。屋根の勾配や雪下ろしの慣習の有無を考慮することができる。上記基準に定められた数式によることのできるほか、観測資料から50年再現期待値を用いることもできるとされている。降雨の影響を考慮した割増が必要となる場合がある。
保有水平耐力計算に当たっては、大雪の場合の応力度の判定のため「短期積雪荷重」を、積雪が長期間に渡った場合の判定のため「長期積雪荷重」を用いる。短期積雪荷重は、上記により導き出された積雪荷重の数値がそのまま用いられる。
限界耐力計算に当たっては、極めて稀に発生する最大級の状態として積雪荷重の1.4倍(500年再現期待値)を設定する。
地震力
地震が構造物に対して作用する短期的な荷重。床や屋根に大きく作用する。地震による建物被害の大きな要因であって、耐震設計に当たっての重要な要素である。
地震力は、一般に、各階の床と屋根に集中して働く。その大きさは、地震時における建物の重量(固定荷重と地震用積載荷重の和)に、一定の係数(せん断力係数)を乗じて算出される。この場合、せん断力係数は、標準せん断力係数に、振動特性、力の垂直方向の分布、地域特性による補正を加えたもので、標準せん断力係数は、中程度の地震においては0.2または0.3、大規模な地震においては1.0とされている。
不動産取得税の軽減措置(住宅の建物部分)
住宅の取得に当たって、住宅の建物部分に係る不動産取得税を軽減する措置。
1)軽減措置の対象となるのは、次の要件を満たす場合である。
・取得した個人の自己所有
・住宅の床面積が50平方メートル(共同貸家住宅の場合は40平方メートル)以上240平方メートル以下
・既存住宅の場合は、1982年1月1日以後に新築されたもの、もしくは新耐震基準に適合することにつき証明がなされたもの
・木造等建築物は築後20年以内であり、一定の耐震基準を満たしていること
2)課税の軽減は、課税標準の控除及び税率の特例の二つである。
(a)課税標準の控除
・新築住宅の場合: 1,200万円を住宅価格(評価額)から控除
・既存住宅の場合:建築年に応じて一定額(建築年が新しいほど大きい)を住宅価格(評価額)から控除
(b)税率の特例
・3%に軽減(本則は4%)
ただし、この特例の適用については期限(2027(令和9)年3月31日)が定められているので、具体的な期限について確認が必要である。
なお、認定長期優良住宅および認定低炭素住宅に対する不動産取得税の課税については、別途の軽減措置がある。
水平荷重
構造物に対して横方向からかかる荷重で「横荷重」ともいわれる。
建築基準法施行令第83条第1項では、「建築物に作用する荷重及び外力」として、1)固定荷重、2)積載荷重、3)積雪荷重、4)風圧力、5)地震力を掲げ、さらに第2項では、「建築物の実況に応じて、土圧、水圧、振動及び衝撃による外力」をも考慮に入れなければならないとしている。このうち、1)〜3)が主に鉛直方向への荷重であるのに対して、4)5)は、水平荷重を特に考慮する必要がある外力である。
吹き上げ荷重
吹き上げる風によって生じる荷重。木造建築物においては、軒や垂木が下からの風圧力で押し上げられることがあるが、このときに作用する力である。
一定の算定式によって計算されるが、軒高や軒の出が大きいほど大きくなる。