住宅瑕疵担保責任保険
じゅうたくかしたんぽせきにんほけん
新築住宅の建設業者や販売業者が、建築・販売した住宅に瑕疵があった場合に、顧客である住宅の注文者および購入者に対する瑕疵担保責任を果たすための資力確保措置を確実にするための保険。注文者および購入者からの請求に基づき補修等を行なった事業者に保険金が支払われる。また、倒産などにより事業者が瑕疵担保責任を履行できない場合には、注文者等が直接保険金の支払いを請求できる。
耐震偽装事件等を受けて、注文者等の消費者保護のため制定され、2009(平成21年)より施行された「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(住宅瑕疵担保(責任)履行法)」において、建設業者は、住宅建設瑕疵担保保証金(同法第3条)、宅地建物取引業者は、住宅販売瑕疵担保保証金(同法第11条)の供託が義務付けられているが、いずれも、住宅建設瑕疵担保責任保険契約または住宅販売瑕疵担保責任保険契約をした住宅については供託が不要となり、この保険によって賄われることとなる。
保険の引き受けは、財産的基礎、業務の適切な実施等についての要件(同法第17条)を満たすものとして国土交通大臣が指定する住宅瑕疵担保責任保険法人が行なう。
また、この保険契約に係る建設工事の請負契約または売買契約に係る紛争については、住宅品質確保法に定める指定住宅紛争処理機関(弁護士会等)におけるあっせん、調停および仲裁を求めることができる。
建築
「建築物を新築し、増築し、改築し、または移転すること」と定義されている(建築基準法第2条第13号)。
瑕疵担保責任
売買契約や請負契約の履行において、引き渡された目的物が種類または品質に関して契約の内容に適合しない場合に、売主・請負人が買主・注文者に対して負うこととなる責任。債務不履行により生じる責任のひとつで、目的物が特定物(その固有性に着目して取引され代替性がない)である場合の「契約不適合責任」と同義である。
瑕疵担保責任を負わせるためには、買主・注文者は、売主・請負人に対して、履行の追完請求(補修等の実施請求)、代金の減額請求、報酬の減額請求、損害賠償請求または契約解除権の行使をしなければならない。
なお、住宅の品質を確保するため、新築住宅の瑕疵担保責任について「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく特別の定めがある。詳しくは「売主の瑕疵担保責任(品確法における〜)」及び「請負人の瑕疵担保責任(品確法における〜)」を参照。
資力確保措置(住宅瑕疵担保履行のための〜)
新築住宅を引き渡す場合に、瑕疵担保の履行を確保するために必要とされる措置をいう。
特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律によって、2009(平成21)年10月1日以降の引渡しについて義務化された。
資金確保義務を負うのは、新築住宅の建築を請け負った建設業者または新築住宅の売主となる宅地建物取引業者である。
この場合、新築住宅の発注者や買主が宅地建物取引業者である場合には、資金確保措置は不要である。
確保措置の方法は、保険加入と供託とがある。保険による方法は、国土交通大臣が指定した住宅瑕疵担保責任保険法人が保険者となる保険に加入する。
この場合、保険法人は例外なく保険の申込みを受け付ける義務がある。また、供託による方法は、引き渡した住宅戸数に応じて決められた額の保証金を法務局に供託する。
宅地建物取引業者
宅地建物取引業者とは、宅地建物取引業免許を受けて、宅地建物取引業を営む者のことである(宅地建物取引業法第2条第3号)。
宅地建物取引業者には、法人業者と個人業者がいる。
なお、宅地建物取引業を事実上営んでいる者であっても、宅地建物取引業免許を取得していない場合には、その者は宅地建物取引業者ではない(このような者は一般に「無免許業者」と呼ばれる)。
住宅販売瑕疵担保保証金
宅地建物取引業者が新築住宅を販売した場合に、特定住宅瑕疵担保責任(構造耐力上主要な部分及び雨水の浸入を防止する部分の瑕疵に対する10年間の担保責任)を確実に履行するために、当該宅地建物取引業者が供託しなければならない金銭をいう。この供託は義務であるが(住宅瑕疵担保履行法の規定)、住宅販売瑕疵担保責任保険契約を締結した住宅は供託の対象とされない。また、供託金額は、販売戸数(住宅販売瑕疵担保責任保険に係る住宅戸数を除く)に応じて決められている。
特定住宅瑕疵担保責任の対象となる瑕疵によって損害が生じた場合には、買主は、その損害賠償請求権に関して、供託された住宅販売瑕疵担保保証金について他の債権者に優先して弁済を受けることができる。
請負契約
当事者の一方がある仕事を完成することを、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことをそれぞれ約束する契約。例えば、住宅の建築工事、洋服の仕立て、物品の運搬などの契約がこれに該当する。
請負契約の目的は、仕事の完成であって労務の供給ではないから、仕事の目的物が定まっていて、通常は、目的物を引き渡すことで仕事が完成する。
請負契約については民法に一般的な規定がある。また、例えば建設工事の契約に関しては建設業法、運送契約については商法等のような特別法の適用がある。
民法は、
1)請負契約による報酬は目的物の引渡しと同時に支払わなければならないこと
2)引き渡した目的物が契約不適合の場合には、注文者は、補修等の追完請求、報酬減額請求、損害賠償請求、契約解除をすることができること(ただし、注文者の供した材料の性質または注文者の与えた指図等によって生じた不適合を理由にすることはできない。ただし、請負人がその材料または指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない。)
3)契約不適合による請求等をするためには、原則として、不適合を知った時から1年以内にその事実を通知しなければならないこと
4)請負人が仕事を完成しない間は、注文者はいつでも損害を賠償して契約を解除できること
などを定めている。
なお、改正前の民法には、請負人の担保責任の存続期間について特別の定めがあったが、民法(債権関係)改正(施行は2020年4月1日から)によって改められた。ただし、住宅の新築工事の請負に関しては、特定の部位についての契約不適合責任の存続期間は10年とされている(住宅の品質確保の促進等に関する法律)。
売買契約
当事者の一方が、ある財産権を相手方に移転する意思を表示し、相手方がその代金を支払う意思を表示し、双方の意思が合致することで成立する契約のこと(民法第555条)。
売買契約は諾成契約とされている。つまり、当事者の双方が意思を表示し、意思が合致するだけで成立する(財産が引き渡されたときに成立するのではない)。
また、売買契約は不要式契約なので、書面による必要はなく口頭でも成立する。
さらに、売買契約は財産権を移転する契約であるが、その対価として交付されるのは金銭でなければならない(金銭以外の物を対価として交付すると「交換契約」となってしまう)。
当事者の双方の意思の合致により売買契約が成立したとき、売主には「財産権移転義務」が発生し、買主には「代金支払義務」が発生する。両方の義務の履行は「同時履行の関係」に立つとされる。