外皮熱性能
がいひねつせいのう
建築物のエネルギー消費性能を評価するときの評価指標の一つで、室内外の温度差による熱損失量をいう。この数値が小さいほど省エネの程度は大きい。
非住宅建築物については、屋内周囲空間(外気に接する壁から5m以内の屋内空間、屋根直下階の屋内空間および外気に接する床直上の屋内空間、「ペリメータゾーン」という)の単位ペリメータゾーン床面積当たり年間熱負荷(単位は、メガジュール/平方メートル・年、「PAL*」という)を算定する。これを基準として用いる場合には、用途および地域区分に応じて基準とする数値を調整する。
住宅については、外壁や窓の外皮平均熱貫流率(外皮面積・単位温度当たりの熱損失量で、単位は、ワット/平方メートル・度、「UA値」という)および冷房期(一日の最高気温が32度以上となる期間)の平均日射熱取得率(単位外皮面積当たりの日射量に対する日射熱取得量の割合で、「ηAC値」という)を算定する。これを基準として用いる場合には、地域の区分に応じて基準とする数値を調整する。
その具体的な算定方法は、国土交通大臣が定めるとされている。
なお、エネルギー消費性能の基準として外皮熱性能が用いられるのは、(1)住宅に関する省エネ基準、および、(2)すべての建物に関する誘導基準においてである。
建築物
建築基準法では「建築物」という言葉を次のように定義している(建築基準法第2条第1号)。
これによれば建築物とは、およそ次のようなものである。
1.屋根と柱または壁を有するもの
2.上記に付属する門や塀
3.以上のものに設けられる建築設備
上記1.は、「屋根+柱」「屋根+壁」「屋根+壁+柱」のどれでも建築物になるという意味である。
なお、地下街に設ける店舗、高架下に設ける店舗も「建築物」に含まれる。
屋根
建物の上部に設ける覆い。屋根は、雨露、風雪、寒暑を防ぐために設けられ、建築構造の一部となる。
屋根の形には、二つの面が棟で山型に合わさる「切妻屋根」、山型の二面とその両端を斜めに切る二面で構成する「寄棟屋根」、傾斜した四つの面が頂点で合わさる「方形屋根(ほうぎょうやね)」、一つの傾斜面の「片流れ屋根」、水平面の「陸屋根(ろくやね)」、切妻屋根の両端に傾斜面を付加した「入母屋屋根(いりもややね)」などがある。
屋根材としては、粘土瓦、セメント瓦(プレスセメント瓦、コンクリート瓦)、スレート(化粧スレート、天然スレート)、金属(銅、トタン、ガルバリウム鋼板等)が用いられるほか、陸屋根の屋根材には、アスファルト、モルタル、防水シート等の防水材が使用される。また、古民家のなかには茅や藁を用いるものもある。
なお、屋根を仕上げることを「葺く」といい、屋根を「瓦葺」「スレート葺」「茅葺」などに分ける場合もある。
床面積
建築物の各階において、壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の面積をいう(建築基準法施行令第2条1項3号)。
なお具体的な床面積の判定の方法については、建設省(現国土交通省)が、通達(昭和61年4月30日付建設省住指発第115号)によって詳しい基準を設けている。
UA値(外皮平均熱貫流率)
断熱性能および冷暖房の効率性を表す指標として、外皮(外壁、屋根、窓等)の熱損失量の合計(外皮熱損失量)を、外皮全体の面積の合計で除したもの。換気による熱損失は考慮しない。「外皮1平方メートルあたりの、外へ逃げる熱の平均値」などと説明される。
単位は「W/平方メートル・K」で表され、室内と外の温度差が1度ある場合(Kの意味)の、1平方メートル当たりの損失熱量(W)のこと。断熱性能が高いほど、UA値は低くなる。
住宅性能表示制度においては、地域ごとにUA値に対応して、該当する断熱等性能等級が定められており、例えば東京ではUA値0.87が、北海道では0.46が等級4に該当すると定められている。
2022(令和4)年のいわゆる「建築物省エネ法改正」により題名も改められた「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律」の公布・施行により、25(令和7)年4月からは、省エネ基準適合が義務化され、新築住宅については、断熱等級4が最低基準として必要となった。
さらに30年には現在の断熱等級5相当(東京0.60、北海道0.40)が義務化される方向であり、これはZEH基準に相当する。その上に断熱等級6(東京0.46、北海道0.28)、断熱等級7(東京0.26、北海道0.20)が定められていて、これらは一次エネルギー消費量をそれぞれ30%、40%削減し、HEAT20によるG2、G3と同レベルに相当する。
一戸建て住宅については等級7(地域によっては等級6)、共同住宅等にあっては等級5の場合には、UA値およびηAC値(冷房期の平均日射熱取得率)を明示することができる。
平均日射熱取得率(冷房期)(ηAC値)
冷房期における太陽日射の室内への入りやすさの指標。冷房効率のためには、「入りにくい」方が優れているわけであり、値が小さいほど日射が入りにくく、断熱性能が高いということになる(「平均日射熱取得率(暖房期)(ηAH値)」参照)。
単位日射強度当たりの建物内部で取得する熱量の合計を、冷房期間で平均し、外皮面積で除したもの。熱量の合計は、屋根または天井、壁、窓等の開口部の面積にそれぞれの日射熱取得率や方位係数を乗じたものを合計して算定する。
値が小さいほど日射が入りにくく、遮熱性能が高い。北海道等の寒冷地域等を除いて省エネルギーの地域区分に応じた基準値が定められている。改正建築物省エネ法により、2025年4月以降は、UA値(外皮平均熱貫流率)と並んで、基準値への適合が義務付けられている。
省エネ基準
建築物の使用によって消費されるエネルギー量に基づいて性能を評価する場合に、その基準となる性能をいう。「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(建築物省エネ法)に基づいて定められている。法令上の用語は「建築物エネルギー消費性能基準」である。
省エネ基準は、(A)一次エネルギー消費量に関する基準、(B)外皮熱性能に関する基準の二つから構成されている。
(A)一次エネルギー消費量に関する基準
すべての建物についての基準で、一定の条件のもとで算出した、空調、照明、換気、給湯等の諸設備のエネルギー消費量および太陽光発電設備等によるエネルギーの創出量
(B)外皮熱性能に関する基準
住宅についての基準で、一定の条件のもとで算出した、外壁や窓の外皮平均熱貫流率(単位外皮面積・単位温度当たりの熱損失量)および冷房期の平均日射熱取得率(単位外皮面積当たりの単位日射強度に対する日射熱取得量の割合)であって、地域の区分に応じて定める
(注:非住宅建築物についても外皮熱性能に関する基準が定められているが、これは、建築物省エネ法上の「建築物エネルギー消費性能基準(省エネ基準)」とはされていない。)
省エネ基準は、建築物省エネ法による次のような規制、指導、表示などにおいて、その判定、指示、認定等の基準となっている。
(1)適合義務
すべての住宅・非住宅建築物は、新築時等に、一次エネルギー消費量に関する省エネ基準に適合しなければならず、基準不適合の場合には、建築確認を受けることができない。
(2)エネルギー消費性能の表示
建築物の所有者は、その建築物が省エネ基準に適合することの認定を受け、その旨を表示する。
なお、建築物のエネルギー消費性能に関する基準には、省エネ基準のほか、次のものがある。
ア)住宅トップランナー基準
住宅事業建築主に対して、その供給する建売戸建住宅・分譲マンション・賃貸アパートの省エネ性能を誘導する際に適用する基準
イ)誘導基準
省エネ性能向上計画の認定を受けて容積率の特例を受ける際の基準
建物
民法では、土地の上に定着した物(定着物)であって、建物として使用が可能な物のことを「建物」という。
具体的には、建築中の建物は原則的に民法上の「建物」とは呼べないが、建物の使用目的から見て使用に適する構造部分を具備する程度になれば、建築途中であっても民法上の「建物」となり、不動産登記が可能になる。
誘導基準(省エネについての〜)
省エネ性能の向上の促進を誘導すべき基準で、省エネ性能向上計画の認定に当たって適合しなければならないエネルギー消費性能とされている。建築物省エネ法に基づいて定められている。2016年4月1日から施行。
誘導基準は、省エネ基準よりも高い水準の性能が定められている。その概要は次の通りである。
1 非住宅建築物について
イ)外皮熱性能に関する基準
一定の条件の下で算出し、地域の区分に応じて定める、屋内周囲空間(外気に接する壁から5m以内の屋内空間、屋根直下階の屋内空間および外気に接する床直上の屋内空間、「ペリメータゾーン」という)の単位ペリメータゾーン床面積当たり年間熱負荷
ロ)一次エネルギー消費量に関する基準
省エネ基準の0.8倍
2 住宅について
イ)外皮熱性能に関する基準
省エネ基準と同じ
ロ)一次エネルギー消費量に関する基準
省エネ基準の0.9倍