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最終更新日:2025/8/14

特定口座

とくていこうざ

上場株式・店頭株式・上場不動産投資信託の売却益に関しては、個人投資家が確定申告を行なって納税しなければならない。そこで、個人投資家の確定申告にかかる手続負担を軽減するために設けられた制度が「特定口座」である。

1.特定口座の概要
個人投資家は、自己の取引口座のある証券会社に「特定口座開設届出書」を提出することによって、自己の取引口座を「特定口座」として指定することができる(ちなみに、特定口座に指定されていない取引口座は「一般口座」と呼ばれる)。

特定口座は、証券会社に一つだけ開設することができる。複数の証券会社に取引口座がある場合には、それぞれの証券会社でそれぞれ一つずつ開設することができる。

こうして個人投資家が特定口座を持つと、証券会社は個人投資家の上場株式・店頭株式・上場不動産投資信託の売却益(または売却損)を毎月末締めで自動的に計算する。さらに、1年間の取引結果が「年間取引報告書」にまとめられて、翌年1月末ごろに個人投資家の手元に届けられることになる。

2.「特定口座(源泉徴収あり)」の特徴
このような特定口座は、所得税額・住民税額の天引きをするかどうかによって、「特定口座(源泉徴収あり)」と「特定口座(源泉徴収なし)」という2種類に分かれている。

「特定口座(源泉徴収あり)」とは、証券会社が毎月の取引から生じた売却益に係る所得税額・住民税額(現行では税率10%)を、毎月末締めで自動的に顧客口座から天引きするという方式である。ただし、ある月に売却損が生じた場合には、その売却損は翌月以降に持ち越されて翌月以降の売却益と相殺される仕組みとなっている。

この月末締めで天引き(源泉徴収)された金銭は、証券会社が翌月10日までに税務署に納税する。この納税により、証券会社が個人投資家の確定申告を代行することになるので、個人投資家自身は税務署で申告手続をする手間を省くことができるというメリットがある。

個人投資家は「特定口座開設届出書」を提出する際に、「特定口座源泉徴収選択届出書」を併せて提出することによって、この方式の適用を受けることができる。

なお、個人投資家がその年において売却損を被り、「上場株式等の譲渡損失の繰越控除」の適用を希望する場合には、「特定口座(源泉徴収あり)」を選択している場合であっても、自分自身で確定申告をしなければならないことに注意したい。

3.「特定口座(源泉徴収なし)」の特徴
個人投資家が「特定口座(源泉徴収なし)」を選んだ場合には、上記のような天引き(源泉徴収)の仕組みが適用されないため、個人投資家は自分自身で税務署にて確定申告の手続きを行なわなければならない。

ただし「特定口座(源泉徴収なし)」では、1年間の取引結果が「年間取引報告書」にまとめられて、翌年1月末ごろに個人投資家の手元に届けられるので、この「年間取引報告書」によって簡便な方法で確定申告手続を行なうことができるというメリットがある。

なお、「特定口座(源泉徴収なし)」で確定申告を行なう場合、上場株式等の売却益は「配偶者控除等を適用するための所得金額」に加算されてしまうというデメリットがある。

例えば、パート収入のある妻の給与所得が、配偶者控除を受けられる範囲内の給与所得であったとしても、その妻が株式売買で多額の利益を上げたならば、その利益が配偶者控除の適用の判定にあたっての妻の所得金額に加算される結果、配偶者控除の適用外と判定されることがある。
(これに対して、「特定口座(源泉徴収なし)」を選べば、株式売却益は「所得金額」に加算されないので上記のようなデメリットは生じない)

-- 本文のリンク用語の解説 --

確定申告

毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得の金額とそれに対する所得税等の額を計算し、税務署に申告し、納税する手続。2月中旬から3月上旬にかけて、税務署窓口、郵送、インターネット(e−Tax)で受け付ける。国税庁は、事務の合理化と混雑回避のため、e−Taxの利用を推奨している(申告内容によっては電子申告ができないケースもある)。 源泉徴収された税金や予定納税額などがある場合には、その過不足を精算する。給与の年間収入金額が2,000万円を超える者や、給与を1ヵ所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)の合計額が20万円を超える者など、一定の者には確定申告の義務が生ずる。 住宅を購入した場合では、住宅ローンの返済利子分を複数年にわたって所得から控除できる(住宅ローン控除)ため、住宅を取得した勤労者にとっても利点が大きく、義務がなくても確定申告することが一般的である。 所有する不動産を売却した場合には、分離課税となり、譲渡所得から取得費用と譲渡費用を控除した額に課税される。 また、借家経営をしていて年間20万円以上の家賃収入がある場合には、申告の義務が生じる。

上場株式等の譲渡損失の繰越控除

上場株式・店頭株式・上場不動産投資信託の取引に係る売却損を、損失が生じた翌年以降の3年間にわたって、上場株式等に係る譲渡所得および配当所得の金額から繰越控除できるという制度。所得金額の計算は各年ごとに独立で行なうという原則の例外である。

この制度は、まず、譲渡損失を上場株式等の配当等、利子所得の金額および配当所得の金額と損益通算し、なお控除しきれない金額について適用できる。

なお、適用に当たっては、次の注意が必要である。

1. 上場株式・店頭株式・上場不動産投資信託の譲渡損失は給与所得と相殺することはできない。また、事業所得・不動産所得と相殺することもできない。
2.「上場株式等の譲渡損失の繰越控除」の適用を受けるには必ず確定申告をする。個人投資家が「特定口座(源泉徴収あり)」を選択している場合であっても、「上場株式等の譲渡損失の繰越控除」の適用を希望する場合には確定申告しなければならない。

配偶者控除

所得税の課税において、一定の要件を満たす配偶者がいる場合に受けることのできる所得控除をいう。


配偶者控除の対象となる配偶者の要件は、民法上の配偶者であること、納税者と生計を一つにしていること、配偶者の年間所得が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下、給与のみの場合は給与収入が103万円以下)であること、事業専従者として収入がないこと、控除を受ける者(納税者本人)の年間所得が1.000万円以下であることとされている。また、控除額は、納税者本人の年間所得額及び控除対象配偶者の年齢により異なる。

例えば、納税者本人の年間所得額が900万円以下の場合には、控除対象配偶者の年齢が70歳未満であれば38万円、70歳以上であれば(老人控除対象配偶者)48万円である。

なお、配偶者が障害者の場合には、配偶者控除に加えて障害者控除を受けることができる。