危険負担
きけんふたん
売買契約、請負契約のような双務契約(両当事者が債務を負う契約)によって成立した一方の債権が、契約後に責任のない理由で履行不能となったときに、反対側の債権が存続するかどうかの問題をいう。反対債権が存続するか、存続しないかによって、危険をどちら側が負うかが決まる。
民法では、危険負担に関して原則として反対債権は消滅するとする。双務契約においては、二つの債権が牽連すると考えられるからであるが、この場合には履行不能となった債権の債務者が危険を負担することになる。
例えば、建物の建築請負契約では、請負者は代金を受け取る債権を、注文者は完成した建物の引渡しを受ける債権をそれぞれ有するが、建築中に天災で建物が滅失すれば注文者は債権を履行できなくなる。このとき反対債権(代金を受け取る債権)も消滅して、注文者の債務も解消するのである。つまり、危険は請負者(履行不能債権の債務者)が負担している。
だが、その例外として、民法では、契約の目的が特定物に関する物権の移転の場合などにおいては、反対債権は消滅しない(危険を負担するのは履行不能債権の債権者である)と規定されている。そして不動産売買はこれに当たる。買った宅地建物が天災で滅失したときなどでも、反対債権は消滅しないので、代金支払いの債務は残るのである。
そこで、通常は、「責任の無い事由により発生する損失は、引渡し日の前日までは売り主、引渡し日以降は買い主の負担とし、買い主が契約を締結した目的を達することができないときには契約を解除することができる」旨の特約を結び、民法の規定とは異なる危険負担を定めている。
売買契約
当事者の一方がある財産権を相手方に移転する意思を表示し、相手方がその代金を支払う意思を表示し、双方の意思が合致することで成立する契約のこと(民法第555条)。
売買契約は諾成契約とされている。つまり当事者の双方が意思を表示し、意思が合致するだけで成立する(財産が引渡されたときに成立するのではない)。
また売買契約は不要式契約なので、書面による必要はなく口頭でも成立する。
また売買契約は財産権を移転する契約であるが、その対価として交付されるのは金銭でなければならない(金銭以外の物を対価として交付すると「交換契約」となってしまう)。
当事者の双方の意思の合致により売買契約が成立した時、売り主には「財産権移転義務」が発生し、買い主には「代金支払義務」が発生する。両方の義務の履行は「同時履行の関係」に立つとされる。
請負契約
当事者の一方がある仕事を完成することを約束し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束するような契約を「請負契約」という。具体的には、家の建築工事、洋服の仕立て、物品の運搬などが「請負契約」に該当する。
「請負契約」では、労務の供給そのものが目的ではなく、仕事の完成が目的である点に最大の特徴がある。
請負契約については民法第632条から第642条で規定されているが、建設工事に関しては「建設業法」による規制があり、さらに「建設工事標準請負契約約款」と呼ばれるモデル契約書が存在している。
請負契約の一般的な内容は民法では次のとおりである。
1)請負人は、仕事の目的物(例えば家屋の建築工事ならば家屋を指す)を引渡すと同時に、報酬を請求することができる(民法第633条)。
2)注文者は、仕事の目的物に瑕疵(欠陥のこと)がある場合には、その修補を請求し、損害賠償を請求することができる(民法第634条)。
3)注文者は、仕事の目的物に瑕疵(欠陥のこと)がある場合において、そのせいで契約の目的を達成できないときは請負契約を解除できる(ただし建物工事請負契約については解除できない)(民法第635条)。
4)上記2)・3)の規定は、注文者の指図等により瑕疵が発生した場合には適用しない(民法第636条)。
5)上記2)の瑕疵修補請求権・損害賠償請求権は、仕事の目的物を引き渡した時から1年間に限り行使することができる。ただし仕事の目的物が土地の工作物(建物等)であるときは5年間行使できる。また仕事の目的物が石造・金属造などの工作物(建物等)であるときは10年間行使できる(民法第637条・638条)。
6)注文者は仕事が完成する前においては、いつでも、損害を賠償して、契約の解除をすることができる(民法第641条)。
ただし建設業界で使用されている建設工事標準請負契約約款では、上記5)の期間はさらに縮減されている。
債権
人がある人に対して給付を要求することができるという権利を債権という。
履行不能
債務不履行のひとつ。債権が成立した時点より後に、債務者の故意または過失により、債務の履行が不可能となったことをいう。