申告分離課税
しんこくぶんりかぜい
上場株式・店頭株式・上場不動産投資信託の売却益(譲渡所得)に対して、個人投資家が給与所得などのほかの所得と分離して、独自に税額を計算し、確定申告を行なって納税すること。
上場株式等の売却益は、給与所得・事業所得・不動産所得とは別に、独自の「譲渡所得」として課税される仕組みになっており、これを「分離課税」という。
従って、給与所得が多くても少なくても、上場株式等の売却益に対する税率は一定(現行10%)となっている。
しかも、上場株式等の譲渡所得については必ず確定申告を行なう必要があるので、これを特に「申告分離課税」と呼んでいる。
この申告分離課税の制度では、上場株式等の売却益に対して原則的には20%(所得税15%、住民税5%)の税率で課税される。
ただし平成15(2003)年1月1日から平成23(2011)年12月31日までの時限的な優遇措置として、この税率は10%(所得税7%、住民税3%)へと半分に軽減されている。
なお、申告分離課税では、個人投資家が自ら確定申告を行なうという手続き負担を軽減するために「特定口座」の制度が設けられている。
証券会社が納税まで代行するものは「特定口座(源泉徴収あり)」といい、証券会社が売却益の計算だけを行なうものは「特定口座(源泉徴収なし)」と呼ばれている。
譲渡所得
資産を譲渡したことにより得た所得をいう。
譲渡収入と資産取得や譲渡に当たって要した費用の差が譲渡所得である(課税される譲渡所得額=譲渡価額−(取得費+譲渡費用)−特別控除)。
譲渡所得は、その他の所得と合算して課税されるのが原則であるが、土地や建物の譲渡所得については、株式等の譲渡所得と同様に、他の所得と分離して課税される。その課税に当たっては、土地や建物の保有期間に応じて、譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるもの(長期譲渡所得)と5年以下のもの(短期譲渡所得)とに分けられ、税率などが異なる。
給与所得
給与によって得る所得をいい、所得税課税の対象となる所得の種類の一つである。給与とされるのは、俸給、給料、賃金、歳費、賞与や、これらの性質を有する給付である。
給与所得額は、原則として、給与収入額から給与所得控除額を控除した残額であり、所得税はこれに対して課税される。
つまり、原則として、
「給与所得課税額=(給与収入額−給与所得控除額)×税率」
である。
なお、給与所得額は、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」の欄に記載されている。
確定申告
確定申告とは、所得を申告するために、税務署に備え付けられている「確定申告書」という書面に必要事項を記入して、住所地の税務署に提出することを指す。
一般の勤労者の場合は、毎月の給料と賞与から所得税が自動的に源泉徴収され、さらに年末調整によって所得税の納税が完了する。
従って通常は、一般の勤労者は所得税の納税について確定申告を自ら行なう必要はない。
しかし、住宅ローン控除を1年目に受ける場合、給与を2ヵ所以上から受けている場合、医療費控除を受ける場合などには、勤労者が自ら住所地の税務署に出向いて、確定申告を行なう必要がある。
確定申告書の記入は一般の個人には非常に難しい。そこで確定申告の時期には、各税務署の中で、地元の税理士会に所属する税理士たちが無償で個人の相談に乗り、確定申告書の記入を無償で代行してくれている。
確定申告は、毎年2月16日から3月15日までに行なうこととされている。ただし、所得税の還付を受ける場合には、2月16日以前でも確定申告を行なうことができる。
なお、不動産の貸付けによる所得(不動産所得という)がある個人は、必ず確定申告を行なう必要がある(詳しくは「青色申告」、「白色申告」へ)。
不動産所得
不動産の貸付けによる不動産収入がある場合において、次の計算式で求めた金額のことを「不動産所得」と呼ぶ。
「 不動産収入−不動産所得の必要経費=不動産所得 」
このような不動産所得がある場合には、必ず確定申告を行なう必要がある。
なお不動産所得で赤字が生じた場合には、その赤字の全部または一部は、給与所得の黒字と相殺することができる(詳しくは「損益通算の特例」)。
特定口座
上場株式・店頭株式・上場不動産投資信託の売却益に関しては、個人投資家が確定申告を行なって納税しなければならない。そこで、個人投資家の確定申告にかかる手続負担を軽減するために設けられた制度が「特定口座」である。
1)特定口座の概要
個人投資家は、自己の取引口座のある証券会社に「特定口座開設届出書」を提出することによって、自己の取引口座を「特定口座」として指定することができる(ちなみに、特定口座に指定されていない取引口座は「一般口座」と呼ばれる)。
特定口座は、証券会社に一つだけ開設することができる。複数の証券会社に取引口座がある場合には、それぞれの証券会社でそれぞれ一つずつ開設することができる。
こうして個人投資家が特定口座を持つと、証券会社は個人投資家の上場株式・店頭株式・上場不動産投資信託の売却益(または売却損)を毎月末締めで自動的に計算する。さらに、1年間の取引結果が「年間取引報告書」にまとめられて、翌年1月末頃に個人投資家の手元に届けられることになる。
2)「特定口座(源泉徴収あり)」の特徴
このような特定口座は、所得税額・住民税額の天引きをするかどうかによって、「特定口座(源泉徴収あり)」と「特定口座(源泉徴収なし)」という2種類に分かれている。
「特定口座(源泉徴収あり)」とは、証券会社が毎月の取引から生じた売却益に係る所得税額・住民税額(現行では税率10%)を、毎月末締めで自動的に顧客口座から天引きするという方式である。ただし、ある月に売却損が生じた場合には、その売却損は翌月以降に持ちされて翌月以降の売却益と相殺される仕組みとなっている。
この月末締めで天引き(源泉徴収)された金銭は、証券会社が翌月10日までに税務署に納税する。この納税により、証券会社が個人投資家の確定申告を代行することになるので、個人投資家自身は税務署で申告手続をする手間を省くことができるというメリットがある。
個人投資家は「特定口座開設届出書」を提出する際に、「特定口座源泉徴収選択届出書」を併せて提出することによって、この方式の適用を受けることができる。
なお、個人投資家がその年において売却損を被り、「上場株式等の譲渡損失の繰越控除」の適用を希望する場合には、「特定口座(源泉徴収あり)」を選択している場合であっても、自分自身で確定申告をしなければならないことに注意したい。
3)「特定口座(源泉徴収なし)」の特徴
個人投資家が「特定口座(源泉徴収なし)」を選んだ場合には、上記のような天引き(源泉徴収)の仕組みが適用されないため、個人投資家は自分自身で税務署にて確定申告の手続きを行なわなければならない。
ただし「特定口座(源泉徴収なし)」では、1年間の取引結果が「年間取引報告書」にまとめられて、翌年1月末頃に個人投資家の手元に届けられるので、この「年間取引報告書」によって簡便な方法で確定申告手続を行なうことができるというメリットがある。
なお、「特定口座(源泉徴収なし)」で確定申告を行なう場合、上場株式等の売却益は「配偶者控除等を適用するための所得金額」に加算されてしまうというデメリットがある。
例えば、パート収入のある妻の給与所得が、配偶者控除を受けられる範囲内の給与所得であったとしても、その妻が株式売買で多額の利益を上げたならば、その利益が配偶者控除の適用の判定にあたっての妻の所得金額に加算される結果、配偶者控除の適用外と判定されることがある。
(これに対して、「特定口座(源泉徴収なし)」を選べば、株式売却益は「所得金額」に加算されないので上記のようなデメリットは生じない)