地下水モニタリング(水質汚濁防止法の〜)
ちかすいもにたりんぐ(すいしつおだくぼうしほうの〜)
平成元年度に改正された水質汚濁防止法の第15条の規定により、全国の約1万2千の井戸について都道府県知事が毎年度実施している地下水質の測定調査のこと。
この地下水モニタリングは、土壌汚染対策法第4条に定める土壌汚染状況調査を実施する対象となる土地を確定する上で重要な役割を担っている。(詳しくは「健康被害が生ずる恐れのある土地の調査」)
この水質汚濁防止法の地下水モニタリングは、次の3種類の調査方法によって実施され、その結果が毎年公表されている。
ア)概況調査
各地域の地下水質の状況を把握するための井戸の水質の調査のこと。原則として前年度の対象井戸とは異なる井戸を調査する。平成13年度では約4,700の井戸で実施された。
イ)汚染井戸周辺地区調査
概況調査等によって発見された地下水汚染がある場合に、その汚染範囲の拡大・縮小を確認するために行なわれる調査。平成13年度では約2,600の井戸で実施された。
ウ)定期モニタリング調査
汚染井戸周辺地区調査により水質汚染が確認された井戸に関して、汚染を継続的に監視するために行う水質の調査。平成13年度では約4,900の井戸で実施された。
水質汚濁防止法
公共用水域(河川・湖沼・沿岸等)および地下水の水質汚染を防止するために、昭和45年に制定された法律のこと。特に平成元年に地下水に関する規定が追加されて以降は、この法律が地下水汚染に関して中心的な役割を担っている。
水質汚濁防止法の概要は次の通り。
1)生活環境に被害を生ずる恐れがあるような汚水等を排出し、または有害物質を使用する等の理由により、水質汚染を招く危険のある施設を「特定施設」と定義する(水質汚濁防止法第2条)
2)特定施設を設置する工場・事業場等を「特定事業場」と定義する(同法第5条)
3)特定施設を設置する者・使用廃止する者に特定施設設置等の届出を義務付ける(同法第5条等)
4)特定事業場に、排水基準の遵守を義務付ける(同法第3条)
5)指定地域内の特定事業場に、水質汚濁の総量規制を実施する(同法第4条の5)
6)特定事業場に、排出水および特定地下浸透水の汚染状態の測定を義務付ける(同法第4条の5)
7)有害物質を使用する特定事業場において、特定地下浸透水が有害物質を含んでいるとき、その特定地下浸透水を地下に浸透させることを禁止する(同法第12条の3)
8)上記7)に違反して、特定事業場の事業者が、有害物質を含む特定地下浸透水を地下に浸透させた場合において、都道府県知事は地下水の水質浄化を命令することができる。これを地下水の水質浄化の措置命令という(同法第14条の3、同法施行規則第9条の3、同法施行規則別表)
9)都道府県知事に地下水の水質を常時監視することを義務付けた。これにより平成元年以降、毎年全国の約1万2千の井戸について水質調査が実施されている。これを地下水モニタリングという(同法第15条〜第17条)
10)工場・事業場から有害物質を含む水を排出し、または有害物質を含む水を地下に浸透させた場合には、工場・事業場の事業者に過失がなくても、工場・事業場の事業者に健康被害の損害賠償の責任を負わせる(同法第19条〜第20条の3)(詳しくは「地下水汚染の無過失責任」へ)
土壌汚染状況調査
土壌汚染対策法第3条および第4条によって土地所有者等に義務付けられている土壌汚染状況の調査のこと。
土壌汚染対策法では、揮発性有機化合物等の特定有害物質による汚染状況を把握し、健康被害を防止するために、次の2つの場合において土地所有者等に対して土壌汚染状況調査の実施を義務付けている。
1)有害物質使用特定施設の使用が廃止されたとき、その施設を設置していた工場・事業場の敷地であった土地について、土地所有者等は土壌汚染状況調査を実施しなければならない。これを有害物質使用特定施設に係る土地の調査という(同法第3条第1項)。ただし土壌汚染状況調査に代わる知事の確認を受けた場合には調査を実施しなくてよい(同法第3条第1項但書)。
2)都道府県知事は、上記1)以外の場合であっても、特定有害物質による土壌汚染により健康被害が生ずる恐れがある場合には、土地所有者等に対し、土壌汚染状況調査を実施することを命令することができる。これを健康被害が生ずる恐れのある土地の調査という(同法第4条第1項)。
なお土壌汚染状況調査の方法は同法施行規則により詳細に法定されている。
上記1)および2)のどちらについても施行規則で定める方法により土壌ガス調査・土壌溶出量調査・土壌含有量調査のいずれか(または複数)を実施することとされている(同法施行規則第3条〜第5条)。
健康被害が生ずる恐れのある土地の調査
土壌汚染対策法第3条および第4条では、特定有害物質による健康被害を防止するために、土地所有者等に対して土壌汚染状況調査の実施を義務付けている。
このうち同法第4条では、特定有害物質による土壌汚染により健康被害が生ずる恐れがあると知事が認めた場合には、土地所有者等に対し、土壌汚染状況調査を実施することを知事が命令することができると定めている。これを健康被害が生ずる恐れのある土地の調査という(同法第4条第1項)。
ここで重要なのは「土壌汚染により健康被害が生ずる恐れがあると知事が認めた場合」とは具体的にどのような場合を指すのか、ということである。
この点については、同法施行令第3条第1号のイ・ロ・ハにおいて、次のような場合が「知事が認めた場合」に該当すると規定している。(注:平成15年2月4日付環境省環境管理局水資源部長通達「土壌汚染対策法の施行について」を参考とした)
1)土壌汚染が明らかになっている土地であって、現に地下水の水質汚濁が生じているもの。
=これは「使用が廃止された有害物質使用特定施設の敷地等であって、土壌汚染が既に判明して都道府県に報告された土地であり、知事が毎年実施する地下水モニタリングによって地下水汚染が判明しているもの」を基本的に指している。(施行令第3条第1号イ)
2)土壌汚染が明らかになっている土地であって、地下水の水質汚濁が生じることが確実であるもの。
=これは「使用が廃止された有害物質使用特定施設の敷地等であって、土壌汚染が既に判明して都道府県に報告された土地であって、地下水モニタリング(測定回数3回以上かつ2年以上のモニタリング)によって濃度レベルが増加を続けており、次回のモニタリングでは法定基準に適合しなくなると認められるもの」を指している。(第1号イ)
3)土壌汚染のおそれのある土地であって、現に地下水の水質汚濁が生じているもの。
=これは「地下水モニタリングにもとづき、地下水の流動の状況や土地の履歴(有害物質使用特定施設の敷地であること等)を考慮して、地下水汚染の原因と推定される土壌汚染が存在する可能性が高い土地」を基本的に指している。(第1号ロ)
4)土壌汚染の恐れのある土地であって、かつ当該土地が人が立ち入ることができる土地であること。
=上記1)・2)・3)が地下水の観点からの汚染であるのに対して、この4)は関係者以外の人が当該土地に立ち入ることにより直接的に特定有害物質にさらされる危険があるケースを指している(第1号ハ)。
以上の1)から4)のいずれかに該当すれば、「土壌汚染により健康被害が生ずる恐れがあると知事が認めた場合」にあてはまるので、知事は土壌汚染状況調査を実施することを命令することができる。
ただし実際には、地下水モニタリングの実施地点は全国1万2千ヵ所に過ぎないので、地下水モニタリングを端緒として知事が土壌汚染状況調査を命令するケースはまれであると予想される。
なお、上記の1)、2)、3)に該当する土地であっても、汚染された地下水が人の飲用利用に供される可能性がない場合には、知事が土壌汚染状況調査を命令することはできない(土壌汚染対策法施行令第3条、同施行規則第17条)。
また、土壌汚染対策法第3条第1項の「有害物質使用特定施設に係る土地の調査」が行なわれるべきであるにかかわらず、土地所有者等が調査を実施しない場合には、知事は調査を命令することができる(同法第4条第1項)。
関連用語
汚染井戸周辺地区調査
水質汚濁防止法の第15条の規定により、都道府県知事が毎年度実施している地下水モニタリングのひとつ。
すでに発見された地下水汚染地区がある場合に、その地下水汚染地区(およびその周辺)に所在する複数の井戸の水質を毎年検査し、地下水汚染の範囲が経年的に拡大または縮小していることを調べるという調査である。平成13年度では約2,600の井戸で実施された。