販売用不動産の強制評価減
はんばいようふどうさんのきょうせいひょうかげん不動産会社・建設会社が商品在庫として保有する販売用不動産について、その時価が取得価額よりも50%以上下落した際に、決算において販売用不動産の価額を切り下げ、評価損を当期の損失として計上することである。
わが国の商法・証券取引法・企業会計原則では、商品在庫(会計用語では「棚卸資産(たなおろししさん)」という)を決算日に評価する場合には、原則として「取得原価」で評価することとしている。
ただし棚卸資産の市場相場が下落している場合には、当期の損益計算書に評価損を計上するという「低価基準」を採用することも容認されている(企業会計原則「貸借対照表原則5A」「注解10」など)。
このように相場の下落による棚卸資産の評価損を当期に計上するかどうかは、原則的に各企業の会計指針に委ねられている。
ところで、相場の下落が著しく(概ね取得価額より50%以上下落)、回復の見込みがない場合には、各企業の会計方針に関係なく、強制的に棚卸資産の評価損を当期に計上させるという法令上の措置がとられている。これは企業財務の健全性を保つための措置であり、一般に「棚卸資産の強制評価減」と呼ばれている(商法第285条の2など)。
しかしながら近年の不動産価格の著しい下落の影響を受けている建設業界・不動産業界では、時価評価が困難であること、将来価格が回復する見込みがあること等の理由により、2000年まではこの「棚卸資産の強制評価減」の適用を見送り、商品在庫である販売用不動産を取得価額のまま貸借対照表に記載している企業が非常に多い状況にあった。
このため日本公認会計士協会は、企業監査の信頼性を維持するためには、建設業界・不動産業界に対する「棚卸資産の強制評価減」の適用を厳格化する必要があると考えた。
この結果、2000年7月6日に同協会より「販売用不動産等の強制評価減の要否の判断に関する監査上の取り扱い」というガイドラインが公表された。このガイドラインにより2001年3月決算以降、公認会計士の監査対象である建設会社・不動産会社は、販売用不動産等の強制評価減を実施せざるをえないこととなっている。
日本公認会計士協会が、建設業界・不動産業界の企業監査を実施するために2000年7月6日にもうけたガイドラインのこと。正式名称は「販売用不動産等の強制評価減の要否の判断に関する監査上の取り扱い」。
不動産会社・建設会社が商品在庫として保有する販売用不動産の「時価」が取得価額よりも「著しく」下落した場合には、法令等の要請により、決算において販売用不動産の価額を強制的に切り下げる必要がある。このガイドラインはそのための判断基準を明確化し、建設業界・不動産業界に対して適用されるものである。
まず、このガイドラインによれば、販売用不動産の「時価」とは「正味実現可能価額」と解釈されている。また「著しい下落」とは「取得価額に比べて時価がおおむね50%以上下落している場合」を指すものとしている。
次にこのガイドラインにおける時価(すなわち正味実現可能額)の算定基準は下記のとおりである。
(1) 開発を行なわない不動産または開発が完了した不動産の場合
時価=販売見込額−販売経費等見込額
(2)開発後販売する不動産の場合
時価=完成後販売見込額−(造成建築工事原価今後発生見込額+販売経費等見込額)
なお販売用不動産が上記の(1)と(2)のどちらに該当するかは前記ガイドラインに判断基準が明記されている。具体的には次のとおりである。
ア)開発計画に明らかに合理性がないと認められる場合には、その時点で開発計画の実現可能性はないものと判断する。
イ)開発工事が一定期間延期または中断され、以下のような状況にある場合には、原則として実現可能性はないものと判断される。
a: 開発用の土地等の買収が完了しないため、開発工事の着工予定時からおおむね5年を経過している。
b: 開発用の土地等は買収済みであるが、買収後おおむね5年を経過しても開発工事に着工していない。
c:開発工事に着工したが、途中で工事を中断し、その後おおむね2年を経過している。
上記ア・イのどちらかに該当すれば、当該販売用不動産は「開発を行なわない不動産」に分類され、現状のままでの販売見込額をもとにして時価が算定されることになる。